第3話 ザイオン隊との合流。攻略作戦について。
今回、少し長めです。
「それはそれとして……聖木の館とかいう帝国の人体実験場とでも言うような、やべぇ施設を制圧するんだろ? どう仕掛けるつもりなんだ?」
ザイオンがラディウスの方を改めて見てそう問いかけると、
「あ、そうそう。作戦って何かもう決まってたりする?」
と、セシリアもまた、ザイオンに追従する形でラディウスの方を見て問いかける。
「それに関しては、さっきガジェットについて教わりながら少し考えたものがあるのです」
ラディウスの代わりにメルメメルアがそんな風に言い、それにラディウスが続く。
「ああ。大雑把な方針みたいなものだから、後で詳細を詰める必要はあるが……シンプルに真正面から攻撃を仕掛ける部隊と、別ルートで突入する部隊に分けようと思っている」
「陽動部隊と強襲部隊って感じ?」
「まあそうだな。真正面から攻撃を仕掛ける部隊は、堂々と進軍していって、陽動であると思わせる感じだ。ただし、こっちは人数を少なめにするけどな」
ルーナの問いかけに対し、ラディウスがそう答えた所でザイオンが「ふむ……」と呟き、
「……強襲部隊の方が多いという事は……別ルートで突入する部隊が本命であると敵は思うはず……。……つまり、そっちも陽動だという事か?」
という問いの言葉を続けた。
「ああ、そういう感じだ。正確に言うならこの部隊の大半は、撹乱しつつ拠点戦力の掃討を目指しているように見せかける――要するに第2の陽動だな」
「それって、その部隊の中に本命の部隊がいるって事だよね? その本命の部隊は何を? 人数的に制圧は難しそうだけど……」
ザイオンに対するラディウスの返答を聞いていたセシリアがそんな疑問を口にする。
「ああ、その部隊の目的は、第2の陽動を行う部隊に対して敵の防衛部隊の目が向いている隙に、事実上施設に囚われている状態である人々を発見し、安全確保の為の準備と施設での研究についての情報の回収を可能な限り行う感じだ」
ラディウスがセシリアの方を向いてそう告げた所で、
「安全確保の為の準備……ですか? です。救出ではないのですか? です」
という疑問の言葉をラディウスに投げかけるカチュア。
「制圧しながらの救出は逆に危険だからな。敢えて完全に制圧しきるまでその場に留まって貰うつもりだ。ただし――」
「――あ、わかった! その安全確保の準備が出来次第、防衛部隊の目を引きつけている部隊の一部をそちらに回して、囚われている人たちの『場所』を逆に防衛する……と、そういう事だね!」
ラディウスの言葉を遮るようにして、手を上げてそんな風に言うセシリア。
「ああ、そういう事だ」
「戦闘――というか戦略や戦術に関する能力は相変わらず優秀ねぇ……。ちょっと腹立たしいけど」
「むむむ。直接的な戦闘技術が高いのは分かっていたですが、戦略や戦術の方でも私より能力が高いとは想定外なのです。これは少しまずいのです」
ラディウスの頷きに続くようにして、ルーナとメルメメルアが小声で呟く。
それは、ラディウスにもセシリアにも聞こえていなかったが、ふたりには互いの呟きが聞こえていたらしく、「え?」という表情でお互いの顔を見た。
――このふたり、もしかして今更認識したのでしょうか? です。
しっかりとさっきの声が聞こえていたカチュアは、ルーナとメルメメルアが何やら小声で話し始めるのを見ながらそんな事を思ったが、敢えて口にはしなかった。
そうこうしている内に、今まで聞き手に徹していたテオドールが、
「ふむ。それは私がその別ルートからの侵入と、少数精鋭部隊の先導役になる……という事になるのですかな?」
と、ラディウスに問いかける。
「ええまあ、そうですね。現状、聖木の館の内部構造を知っているのは、テオドールさんだけですし、良い別ルートもご存知でしょうから」
「――それはたしかにその通りですが、何故に貴方様は、私が良い別ルートを知っているとお思いに?」
「……普通に考えて、隠密宰相と呼ばれるような方が、あの場所に潜入しておいて、そのくらいの情報を得ていない方が不自然だと思いますが……?」
興味本位といった様子で問いかけてきたテオドールに対し、ラディウスは顎に手を当てながらそんな風に返し、首を傾げてみせる。
「なるほど、そうきましたか。……ええ、たしかにそうですね。――クレリテ殿下たちが手放しで褒め、そして英雄と呼ばれるだけはありますね。当然のように見抜いておられる」
微笑しながらそう口にして、納得するテオドール。
それに対してラディウスは……
――単にこういう人なら、情報収集くらい完璧にしているだろうなっていう推測で言ったんだが……なんか妙な勘違いをされた気がするな……。まあ、敢えて訂正する気はないけど。
……それより気になるのは、ルーナとメルメメルアだ。
さっきからふたりで何やらコソコソと話をしているが、一体何の話をしているんだ……?
なんて事を思っていた。
もう少し手前で区切ろうかとも思いましたが、どうにも上手く区切れそうな場所がなかったので、結局ここまで来てしまいました……
といった所でまた次回! 次の更新は、5月6日(金)の予定です!
 




