第2話 ザイオン隊との合流。リンクとエクリプス。
「ああ。ルティカが異形化――魔人化させられそうになっていたのは、お前さんが一番良く知っていると思うが……あのタイミングで、妹とのリンクが切断されたらしくてな。こちらの世界に何度移動しても、妹だけ現れなかったんだよ」
「……完全に魔人と化していなくても、進行状態になっただけでリンクが切断される……?」
「まあ、しばらくしたら――あんたが妹を救出した後は――また移動してくるようになったけどな」
「なるほど……」
ザイオンの説明を聞いたラディウスは、顎に手を当て、そして考える。
――自動的に切断され、そしてまた自動的に復元される……か。
『魔人化』がリンクを歪めている……とでも言うのだろうか……?
いや……待てよ? あれは異形の存在が寄生している状態になっているようなもの……だったよな……
もしかして、そのせいで『本人』と認識されなくなったのではないだろうか?
セシリアの持つ聖剣のような、なんらかの認証術式が『リンク』に組み込まれているとしたら可能性はあるな。
……だが、そんな特異な術式など、組み込まれていれば気づくと思うんだが……巧妙に隠蔽でもされている……のか?
……駄目だな。あのガジェットも魔人化も、どちらも推測を巡らせるには情報が足りなさすぎる。
ガジェットの方はともかく、魔人化――エクリプスや妖姫に関しては、アルベリヒのせいで完全に手つかずの状態になってしまっているのが痛すぎるな。
なんとか今回の作戦――聖木の館の制圧で、その辺の情報を得る言が出来れば、魔人化……そして、リンクという仕組みの謎に、少しは迫る事が出来るかもしれないが……
「ところで、ルティカはこっちでは何をしているんですか? 向こう側では、私の家――宿酒場で働いていますが……」
あれこれと思考を巡らせ、無言になったラディウスに代わり、ルーナがザイオンへと問いかける。
「ああそうか、あんたがルティカが隠れ蓑にしている宿酒場の娘さんか。美味い飯を毎日食べられて最高だって言ってたぜ」
「そう言ってくれるのは嬉しいですね。こちらこそ、私以上の良い働きをしてくれて感謝していますよ」
などと、互いに褒め合った後、
「おっと……妹が何をしているかの話だったな。今は帝都で情報収集に動いているな。悠久工房について探るメンバーのひとりとしてな」
と、ザイオンが話の流れを戻しつつ、ルティカの今の動きについて告げる。
それを聞き、ルーナは納得の表情を浮かべた。
「あ、なるほど。アルフォンス猊下と一緒に行動しているんですね」
「ま、そういう事だな。ゼグナム解放戦線の表向きのリーダーであるあいつと行動を共にしているのなら、ヴィンスレイドの時のような事態になる事はありえねぇだろうから、個人的にはホッとしているぜ」
「それはまた何故です?」
ザイオンの話に疑問を抱き、首を傾げるルーナ。
それに対し、ザイオンは腕を組みながら説明する。
「あいつはカンが鋭くてな。それによって、今まで幾度となくピンチを乗り越えたり、敵の裏をかく事が出来たりしてるんだわ。だから、『何かヤバい事が起きる』なら、直前に気づいて引き下がるはずだ。で、そうなれば、一緒に行動している者たちの安全も守られる……。つまり、俺の妹も安全だって事さ」
「なるほど……そういうわけですか」
というルーナの納得の言葉を聞きながら、ラディウスは思う。
――アルフォンスは、何らかの異能……のような力を持っているような気がするが、あれは一体どういう代物なのだろうか……
もしかして、メルメメルアやカチュアの『目の力』と同じようなもの……なのか?
……もしそうならば……アルフォンスの祖先は、古の時代に行われていたという獣人に力――異能を発現させる研究および実験の関係者である、という可能性も考えられるな。
と。
魔人化やエクリプスという単語は、割と序盤に登場した代物ですが、なかなかその辺りのアレコレが進展しないまま、今に至っているんですよね……
もう少し途中で挟んでおくべきだったなぁ……と今では少し思っていたりします。
とまあそんな所で、また次回! 次の更新はいつもどおりの間隔となりまして……5月3日(火)を予定しています!




