第1話 ザイオン隊との合流。ザイオンとルティカ。
「あ、出来た! ありがとう、ルーナ!」
セシリアが、地面に突き刺した聖剣を起点として左右に広がる魔法障壁を見ながら、そんな喜びと感謝の声を上げる。
「どういたしまして。ちなみにその障壁、それなりに強度があるから、さっきバンバン撃ってたビームと同等の威力の攻撃を受けても、1発か2発なら耐えられると思うわよ」
「えっ!? あの攻撃に耐えられるのですか? です。凄い強度ですね……です」
ルーナの話を聞いていたカチュアが、驚きそう口にした。
「まあもっとも……アレを受け止めたら、撃つのと同じくらいの魔力を消費するから多用は出来ないけど……」
「なるほど……。でも、さすがにあのビームと同じ威力を持つような攻撃を、バンバン撃てるような敵と相対する事はほとんどないと思うし、消費が大きくてもそこまで問題はないと思うけどね」
そう言ってくるセシリアに対し、
「そうねぇ……。そうだといいんだけど……」
と、少しため息混じりにそうルーナが返した所で、その場から離れていたテオドールが戻って来て告げる。
「ザイオン隊が到着いたしました」
ラディウスたちがテオドールの方を見ると、テオドールの横に、くすんだ色のサーコートを羽織った、いかにも軍人ですと言わんばかりのやや年若い男性の姿があった。
「英雄ラディウス、会えて光栄だぜ! 俺はゼグナム解放戦線第3強襲遊撃部隊の隊長を務めるザイオン・メイユーズだ。今日は妹を助けてくれた礼も込めて、全力で……いや、全力以上で手伝わせて貰うぜ! だから、なんでも指示してくれよな!」
やや熱血気味にそんな風に言い、サムズアップしてみせる年若い男性――ザイオン。
「あ、ああ、よろしく頼む。……というか、妹?」
「おっと、その説明が抜けてたな。向こう側の世界でのヴィンスレイドの一件を覚えているか? あの時、あんたが助けてくれた冒険者――正確には冒険者に扮した教会の調査役だった『ルティカ』は、俺の妹なんだ」
首を傾げるラディウスに対し、ザイオンが腰に手を当てながらそう説明する。
「なるほど……そういうわけか。たしかにそう言われてみると、あの時助けた女性冒険者――ルティカは、『メイユーズ』と名乗っていたな。……という事は、もしかしてザイオンさんも向こう側へ行けるのか?」
「あー……そいつに答える前に、ひとつ頼み事を言わせてくれ。――俺に『さん』づけはしないでいいぜ。つーより、俺は『さん』づけされると、どうもこそばゆくてたまらねぇんだわ……」
ラディウスの問いかけに対して、苦笑気味にそんな風に返し、頬を人差し指で掻くザイオン。
「そ、そうなのか。わかった」
「それに……だ。そもそも今日の――今回の作戦の指揮官はあんただしな」
ザイオンはそう言って左右に手を広げてみせた後、
「んで、俺が向こうへ行けるかだが、俺も妹と同じリンクだ。向こう側では王都で冒険者をやっている。ヴィンスレイドの一件の時は妹とのリンクが切断されたから慌てたもんぜ……」
なんて事を言い、ため息をついた。
それを聞いたラディウスが当然の如く疑問を抱く。
「……ん? リンクが切断された?」
ザイオン到着です。
あと1話か2話ほど会話をしたら、聖木の館の攻略戦が開始される予定です。
といった所でまた次回! 次の更新もいつもの間隔どおりで、4月30日(土)を予定しています!




