第5話 戦いの前に。メルメメルア、グランベイルへ。
「あ、折角なのです。私もグランベイルに同行して構わないです? 私も『ビブリオ・マギアス』のマークからは確実に外れているので、問題ないのです」
メルメメルアはそう言いながらラディウスの方を見る。
――なるほど、カルティナやグランベイル、そして『ビブリオ・マギアス』の動きに何かあった時、すぐに俺たちに伝えられるように……って事か。
もし何かあったとしても、メルの技量であればある程度は対処出来るだろうし、カルティナの護衛も十分可能だろうからな。
ラディウスはメルメメルアの視線からそれを理解し、
「たしかにそうだな。――カルティナ、すまないがグランベイルの案内をしてやってくれないか?」
と、カルティナに対して言った。
「ああわかった。カチュアの家族のような存在だというのであれば、無下には出来ない。しっかり案内させて貰おう」
カルティナはラディウスの言葉に、念の為に護衛を頼むという意味であると解釈しつつ、そんな風に答える。
実際に護衛されるのは、カルティナの方だったりするのだが……
「……そういえば、というのもあれだが、なんだかんだで店を長く空けてしまっているんだよなぁ……結局」
ラディウスがそう呟くように言うと、メルメメルアがラディウスの方を見て問いかける。
「一応、確認してくるです?」
「――そうだな。セキュリティ用のガジェットを複数設置してあるし、荒されているとかはないと思うが、念の為そうしてくれると助かる。もっとも、『ビブリオ・マギアス』の連中が監視しているとかじゃなければ……だが」
「もしもの時は、適当に留守中の雇われ店員という事にしておくのです」
メルメメルアの返答に対し、ラディウスは鍵をストレージから取り出しつつ、頷く。
「なるほど、良い手かもしれないな。――これが店の鍵のスペアだ。これで扉を開ければ、セキュリティ用のガジェットは全て停止して、逆に鍵を掛ければ自動で全て作動するようにしてある」
「なるほどなのです。鍵をかける時は注意が必要そうなのです」
そう言って鍵を受け取ったメルメメルアは、「預かったのです」と言葉を続けた後、そのままカルティナの方へと向き直り、問いかける。
「カルティナさん、早速行くですか?」
「うむ、メル……アさえ問題なければ、すぐにでも向かおうと思う」
カルティナが名前の所で詰まりながら、答える。
――今……無理矢理、略称っぽくしたよね……まあ、わかるけど。
セシリアがそんな風に思っていると、
「私の方は特に準備も持っていく物もないので、いつでも問題ないのです。あ、ちなみにメルメメルアなのです」
と、返事をするメルメメルア。
――あ、やっぱりバレてるし。
なんて事を思うセシリアと、「うぐっ」と小声で呟くカルティナ。
「……ではメルメメルア、早速向かうとしようか」
カルティナが咳払いをしてそう告げると、メルメメルアがそれに頷く。
「はいなのです」
そうして去っていくふたりを見送った所で、カチュアはラディウスたちを見回し、そして問いの言葉を投げかける。
「それで、皆さんはカルティナさんではなく、私を探しているような感じでしたですが、私に何かご用なのでしょうか? です」
この節はこの話で終わりです。
……というわけで、次の節(話)からようやく向こう側に入ります!
いやはや、思ったよりも「戦いの前に」が長くなってしまいました……
といった所でまた次回!
なのですが……すいません。次の更新も少し空きまして、4月7日(木)の予定です。
その次からは、また通常の更新頻度(更新間隔)に戻れると思います!




