第12話 街へ赴いて。ささっと回収、そして作成。
「そう言えばそんな事言ってたのだわ。ちなみに何が不足してるのだわ?」
「グラスト霊鋼とディナス繊維だな」
クレリテの問いかけにラディウスがそう返すと、
「グラスト霊鋼とディナス繊維? ……ちょっと聞いてみるのだわ」
なんて事を言ったかと思うと、すぐに、
「――これでいいのだわ? フォルツ……資材を管理してる人間に聞いて貰ってきたのだわ」
と言葉を続け、ラディウスに素材を手渡す。
「ああこれだ。わざわざすまんな、助かる。……というか、メルのアパルトメントにいたんじゃなかったのか?」
「色々と準備する都合で、私だけ拠点に戻っていたのだわ」
ラディウスの問いかけにそうクレリテが答えると、
「まあ、適材適所という奴ですね」
なんて事を付け足すように言うリゼリッタ。
「……凄く貶されているようにも聞こえるのだわ」
「キノセイデスヨ?」
クレリテに対しそう返すリゼリッタだったが、それはどう聞いても棒読みな感じであった。
「その言い方は思いっきり嘘なのだわっ! でも、言っている事は事実だから反論出来ないのだわっ! ぐぬぬぅーっ!」
そんな事を言って地団駄を踏むクレリテ。
それを見てラディウスは……
――『ぐぬぬぅーっ!』って、凄い久しぶりに聞いたな……
なんて事を思いながら、ガジェットをその場で組み上げ始める。
「おおすげぇ……! メチャクチャはええ上に、何が何だかわからねぇ……!」
「その感想、なにかがおかしい気がしますが……まあ、言いたい事はわからなくもないです」
「このスピードに至るには、まだちょっとかかりそうな気がするのだわ……」
「それ、いずれクレリテも至れるって事か?」
「このままラディから教わっていれば多分いけるのだわ! ……セ、セシリアよりは早く!」
「ちょっと待ってくださいです。ラディウスさんから教わっているとはどういう事なのです? 少し興味があるのですっ。詳しく話すのですっ。すぐに話すのですっ」
「ち、近い、近いのだわっ。グイグイ来すぎなのだわっ。ちょっと待つのはメルの方なのだわぁっ!」
とまあ、そんなこんなな声が飛び交っている間にもラディウスの作業は高速で進んでいき……
「――よし、完成だ! これを使えば皇帝宮殿の深部のセキュリティも無力化出来るはずだ」
と言って、リゼリッタに完成したばかりのガジェットを手渡すラディウス。
「ありがとうございます。……それにしても、本当にあっという間に完成しましたね……。驚きです……」
驚きのみならず、呆れも少し混じったようなそんな声でそう言葉を紡ぎつつ、渡されたガジェットとラディウスを交互に見るリゼリッタ。
「まあ、ほぼ出来上がっていたしな」
ラディウスがリゼリッタに対し、そんな風に返した所で、
「あと必要なのはルーナのガジェットだけなのだわ。どのくらいで完成するのか気になるのだわ」
と、クレリテが顎に手を当てながら言う。
「あー……出てくる前に現在の進行状況を確認して来ればよかったな。――とはいえ、今のルーナの技量であれば、もう既に完成しているんじゃないか?」
「んじゃ、とりあえず戻ってみるとすっか。ここに長居しててもしょうがねぇしな」
ラディウスの返事に、クレリテに代わってそう答えるアルフォンス。
そして、それに皆が頷いた。
……否。クレリテ以外の皆が頷いた。
不足している素材をあっさり入手し、ガジェット完成です。
……実の所、素材を入手するまでのクレリテがメインとなるエピソードがあったんですが、準備フェイズが既に想定よりもかなり長くなってしまっているので、これ以上ローテンポになるのもどうかと思い、バッサリとエピソードごとカットしました。いずれどこかで書くかもしれません。
といった所でまた次回! 次の更新はいつもどおりの間隔となりまして、3月16日(水)を予定しています!
※追記
誤字を修正しました。




