第9話 街へ赴いて。ドールガジェットと災厄。
「まあ、あの時は屋内――しかもかなり狭い場所だったってのもあって、複数のトラップガジェットを設置する事が出来たからな。直接的な交戦自体は、トラップでのダメージを十分に与えた上での、最後の最後だけだったお陰で、上手く倒す事が出来たようなもんだ」
「そりゃまあ……たしかにレゾナンスタワー内なら、狙撃タイプのスナイプフィギュアは本領を発揮出来ねぇかもしれねぇが……」
ラディウスの言葉にアルフォンスが、うーん……と唸りながらそんな風に返すと、クレリテがそれを引き継ぐ形で、
「それでもキリングアイドルは接近戦に強い白兵タイプなのだわ。狭いからといって、そこまで極端に弱体化するなんて事はないのだわ……」
と呆れ気味に言って、再び首を横に振った。
「白兵タイプって言っても、拠点制圧用のアサシンタイプと違って、元々乱戦なんかの1対多の状況を想定しているような感じの戦闘用ドールガジェットだからな。接近戦での強みは、単純に近距離攻撃の範囲が広いっていう所だから、狭い場所ならその利点はほとんどないぞ」
ラディウスはそう言いながら、ふと思った事を考え始める。
――しかし……アルフォンスたちの言い方はやや大げさな気がするが、たしかにドールガジェットっていう代物は、投入する戦場によっては戦況を変える程の力があるんだよな……。
古代の人間は、あんなもの量産して何をするつもりだったんだ?
人間――国同士の争いで使ったら、過剰殺戮確定だから、そうそう多用するとは思えないし……古代文明が滅びる原因となった『災厄』に抗うため……?
というか……そもそも『災厄』とは一体なんなのかってのが未だに謎なんだよな……
封魂術で生きながらえた古代人も、何故かその事を知っている様子はないし……。当時は、なんらかの情報統制が敷かれていたのだろうか?
だが、何の情報もないのに『災厄』への対抗手段を各国が研究出来るはずが……
あ、いや、まてよ? そうでもないか?
例えば各国の首脳やその周辺――いわゆる国家の上層部の人間だけが情報を知っていて、下の者はそういった人間の指示に従っていただけ、とかそんな感じであれば不可能ではないか。
……もしそうだとすると、アルベリヒあたりは『災厄』がなんであるのかを、知っていたりする可能性もあるな……
ラディウスがそこまで思考を巡らせた所で、クレリテがラディウスに対して首を傾げながら、もっともな疑問を口にする。
「ラディ、急に無言になってどうかしたのだわ?」
「ああいや、古の時代にドールガジェットなんて物騒なモンを作ってまで、何をしようとしていたんだろうな、と思ってな」
「言われてみると、謎なのだわ。戦争にでも使ったのだわ?」
ラディウスの言葉にそう返しながらメルメメルアの方を見るクレリテ。
「……いえ、あれが作られた頃には、魔物の群れなどを相手とした大規模な戦闘自体はあったですが、人間同士で行うような戦争の類は基本的に一切行われていなかったのです。……裏で小競り合いの類はあったかもしれないですが」
「つー事は、魔物の群れ相手……か? いや、それにしちゃあ過剰戦力だな」
メルメメルアの話を聞いたアルフォンスが、腕を組みながらそう言うと、
「あと考えられるのは、良く分かっていない『災厄』とやらへの対抗手段として作られたという可能性だが……」
と、補足するようにラディウスが告げる。
「……『災厄』については、私も知らないのです。当時の人間で『災厄』の詳細を知っている人は、多分ほとんどいないのです。ただ、放っておけば『世界が滅亡するのは間違いない状況』であり、各国が『対応手段を講じている』事は、皆認識していたのです」
「……よくまあ、そんなんで混乱や暴動の類が起きなかったもんだな」
「なんらかの『コントロール』が行われていたのかもしれませんね」
「アルベリヒの事を考えると、大いにありえる話なのだわ」
メルメメルアの説明にアルフォンスたち3人がそんな風に言う。
ラディウスも言葉にはしないが、先程同じような事を考えたように、それには同意だった。
思ったより長くなってしまったので、一旦ここで区切ります……
そして、次回の更新なのですが……次は良いものの、その次が2日ほど普段の更新間隔より空いてしまうであろう状況でして……
そうなると、ちょっと間が空きすぎてしまうのが気になりまして……
申し訳ありませんが次回も1日ほど普段の更新間隔から遅らせて、その次の更新日との間隔を同じにしようと思います。
ですので……次の更新は3月6日(日)の予定です!




