第7話 街へ赴いて。それぞれの行動。
「何でそう思うのだわ?」
「あそこに属する魔工士――正確には古代の方々なので『クラフター』とか『スカラー』などと呼ぶのが正しいですが――は、帝国領内の術式通信網やライフラインを担っているのです」
「なるほどなのだわ……。たしかに、なんらかの情報を持っていそうな気がするのだわ……」
クレリテがメルメメルアの説明に納得の表情でそう返した所で、アルフォンスが、
「……よし、ならばエンシェントファクトリーと悠久工房に接触してみよう」
なんて事を、クレリテとリゼリッタを交互に見ながら告げる。
「そうですね、その方針に私も賛成です。……接触するならば、まずは規模の小さい悠久工房でしょうか。エンシェントファクトリーは規模が大きいので、『色々な面で注意が必要』そうですし、こちらに『引き入れるのも大変そう』です」
そう同意しつつも少し含みのある言い回しをするリゼリッタ。
それに対してアルフォンスは、その言い回しの意味を理解した様子で、
「……たしかにそうだな。んじゃ、まずは悠久工房の接触して味方に引き入れる方向で動くとして……問題は、どうやってアルベリヒから引き剥がすか……だな。――メルメメルア、悠久工房に属する魔工士……クラフターとスカラーだったか? その者たちは、どういう理由で従わざるを得ない状況になっているんだ?」
などと言って、メルメメルアの方を見る。
視線を向けられたメルメメルアは、
「……すいませんです。そこまでは残念ながら把握出来ていないのです……」
と、申し訳なさそうな表情で告げる。
「そうか……。いや、ここまでの情報が得られただけでも十分だ。そんな申し訳なさそうな顔をしないでくれ」
「だわだわ! 私たちで直接探りにいくから問題ないのだわ!」
「はい、その通りです。それに……どの道、アルベリヒの周りの情報収集は必要ですし、仔細はおまかせください」
アルフォンスの言葉に続く形で、クレリテとリゼリッタも、そう言葉を紡ぐ。
「うーん……。こうなってくると聖木の館の件――ひいてはディーゲルとその娘について――も、なるべく急いで片付けてしまいたい所だな……」
メルメメルアたちの会話を聞きながら、あれこれと思案していたラディウスが、呟くようにそんな事を告げる。
それは、早く片付ける事で、アルフォンス側の動きを間接的に支援出来ると考えたからだ。
「ああ、そいつには俺も同意するぜ。――リゼ、例の部隊はどのくらいでラディウスの所へ移動させられる?」
「それは、現在地次第……としか言えませんね……。聖木の館に近い所なのは分かっていますが、あの辺りは地形が入り組んでいるので、場所によっては遠回りが必要になりますし……」
リゼリッタがアルフォンスの問いかけにそう答えつつ、ラディウスとメルメメルアを交互に見る。
その視線に気づいたメルメメルアが、
「たしかにその通りなのです。ちょっと待ってくださいです」
と告げた瞬間、ラディウスの視界が向こう側の世界へと切り替わった。
――ん? こっちに来て何を?
そうラディウスが疑問を抱くのとほぼ同時に、再び視界が切り替わる。
あちら側の世界での滞在時間は10秒もなかった。
ラディウスが、今のは何なのかとメルメメルアに問うよりも先に、
「座標を確認したのです。X7178 Y10112なのです」
と、そうリゼリッタに対して返事をするメルメメルア。
ラディウスはそれを聞き……
――座標? ……うーん、例の術式通信ガジェットとやらにGPS的な何かが搭載されていて、それを使った……って感じか?
もしそうなら、ちょっと仕組みが気になるな。
……なんて事を思ったのだった。
街での準備タイムは、あと1~2話くらいで終わる想定です。……おそらく、ですが……
そして次の更新なのですが、今週はちょっと色々あって執筆時間が十分に取れない為、申し訳ありませんが、いつもよりも1日程間が空きまして……2月27日(日)を予定しています!




