第4話 街へ赴いて。古の時代の料理とは。
「この店には個室があるのか」
「スイーツショップにしちゃ珍しいな。つーか、雰囲気が料理屋っぽいぜ」
クレリテによって――ほぼ無理矢理に――案内されたスイーツショップの個室で、そんな感想を口にするラディウスとアルフォンス。
「ここは夜になると、古の時代の料理を再現したお高いディナーを出す店になるのだわ! ここなら、誰かに話を聞かれる心配がないのだわ!」
クレリテがそう言いながら胸を張る。
「なるほど……そういう店ですか。たしかにそういう前提でメニューを見ると、ディナーのデザートにもなりそうな物が結構ありますね」
「落ち着いて話が出来るのと、メニューにあるスイーツが、どれも美味しそうなのは良いのですが、もうちょっと普通に連れてきて欲しかったのです……」
リゼリッタとメルメメルアがメニューを見ながらそんな風に言う。
……もっとも、メルメメルアの方はクレリテに引っ張られてきたせいか、疲労の色の見える表情と少し恨みがましい声であったが。
「それにしても、古の時代の料理を再現したというだけあって、たしかに古今東西色々な物があるな……」
……まあ、この世界の古の時代の料理って、何故か東方料理が多いんだけどな……と続くのだが、そこは口にせずに心の中でだけ呟くラディウス。
そして、そのままメニューをめくった所で……
「って、うおっ!? サンプーチャンがある……だと!?」
と、声を大にして驚きの声を上げた。
「ラディがそんな驚き方するなんて珍しいのだわ。そのサンなんとかは、そんなに美味しいのだわ? 何度も来ているけど、ちょっと高いから食べた事ないのだわ」
突然のラディウスの声に、不思議そうな表情で問いかけるクレリテ。
それに対してラディウスは頷き、答える。
「ああ、これは『幻のスイーツ』なんて言われる事もあるような代物でな。もちろん美味いんだが、それ以上に『面白い』んだよな」
「? 面白いのです?」
「どういう事なのだわ?」
首を傾げるメルメメルアとクレリテに対し、
「凄くもっちりしているのに、まったく皿や箸や歯にくっつかないっていう代物だ。完璧な物は、まさに芸術品と言っても過言ではない」
と、そんな事を告げるラディウス。
――古の時代の料理を再現した物を出す店だとはいえ、まさかこれまで再現されているとは……
転生する前に、家の近くに新しくオープンした店で一度食べたきりだったが……よもや、ここで再会するとは夢にも思わなかったぞ……
「ふむ……。良く分からんが、頼んでみるか」
と言って、全員分を注文するアルフォンス。
そして……出てきたそれを食した皆が、とても良い笑顔で「たしかに面白い! たしかに芸術品!」と口を揃えて言うのを見て、満足げな表情をするラディウス。
ちなみに、メルメメルアに至っては、
「とても綺麗な黄金なのです! しかも、もっちりしていて歯にくっつきそうな感じなのに、本当にくっつかないのです! パーフェクトなアーティスティックスイーツなのです!」
などと、ハイテンションで叫んだほどであった――
前回、ギャグっぽいシーンを削りすぎたので、今回は逆に追加してみました。
……が、その結果、話がほとんど進展しない回になってしまったような気が……
……ま、まあ、そんな所でまた次回! 次の更新は、2月17日(木)の予定です!




