第3話 街へ赴いて。メルメメルアとクレリテ。
「うんうん、やっぱりマキシマムベリーベリータルトは美味しいのだわ」
「そうですねぇ。この甘味と酸味のバランス……やはり、最高ですねぇ」
クレリテとリゼリッタがそんな事を言いながら、笑顔でタルトを口に入れていく横で、
「なるほど……それぞれのベリーの配置が計算されているのか。なかなかに芸術的な代物だな」
と、妙な分析と称賛を口にするラディウス。
「その感想はさすがに想定外だぜ……」
アルフォンスがタルトを手に持ちながら、ラディウスの方を見て肩をすくめてみせる。
「そうか?」
そう言ってラディウスが首を傾げた所で、
「うーん、ベリーの配置が絶妙な計算のされ方をしていて、とてもアーティスティックなのです」
なんていう声が聞こえてくる。
「ほら、俺と同じ感想を言っている人が……って、ん?」
ラディウスはその声に聞き覚えがあった。
そしてその直後、
「おおおっ! メルメル大発見なのだわっ!」
と、クレリテが声を大にしてラディウスが言葉を発するよりも先に、そう告げる。
「1軒目で当たりを引くとは運が良いのか悪いのか……ですね。個人的には、もう少し色々と食したかったのですが」
「おいまてリゼ、『買う』じゃなくて『食す』って言い回ししたよな? 今。……他の店でも俺に買わせる気だったのかよ?」
リゼリッタの発言にジトッとした目を向けるアルフォンス。
それに対してリゼリッタは目を逸した。
「あからさますぎんだろっ!」
なんていう突っ込みを入れるアルフォンスを見ながら、
「皆さん揃ってどうされたです? 私に何か用事があるです?」
というもっともな疑問の声を口にするメルメメルア。
「あるのだわ。メルに聞きたい事があるのだわ。……でも、せっかくだから私のオススメするスイーツショップで、スイーツを食べながら話をするのだわ」
「はい、アルが支払うので高いのでも大丈夫ですよ」
クレリテに同意するように頷き、そう告げるリゼリッタ。
それに対しアルフォンスは、
「俺が支払うのが確定事項になってんだが……。まあ別にいいけどよ……」
と言って、やれやれと首を横に振った後、
「つーか、ここじゃ駄目なんか?」
という問いの言葉を続けて投げかけた。
「今言った通り、オススメの良い所があるのだわ! せっかくだからメルにも教えるのだわ! さあ、行くのだわっ!」
なんて事を言って、強引にメルメメルアを引っ張っていくクレリテ。
「あ、ちょ、ちょっと、待ってくださいですーっ!?」
引っ張られながらそんな声を上げるメルメメルアを見ながら、
「……この光景、定期的に見るな……」
と、呟くラディウス。
「くっ、タルトの最後の一欠片に気を取られて出遅れました……っ!」
などと悔しそうな表情で口にしながら、クレリテたちを追うリゼリッタ。
「俺も何度も見てきた光景だな。なにしろ少しはマシになったが、クレリテは昔っからあんな感じだからなぁ……。いきなり勢いだけで突っ走り始めやがろうとすっから、その度に俺やリゼリッタが捕まえていたもんだ」
「そ、そうなのか……」
「けどよ、あの強引さによって『状況』が改善される事も、実はそれなりにあったりすっから困るんだよなぁ……。ちなみに今回も何か理由があるんだろうと思って、俺はスルーした」
「そ、そう……なのか? 俺にはさっぱりだが……良く分かるな」
「そりゃま、長年一緒にいるわけだしな。……っとと、見失う前に俺たちも追いかけるとしようぜ」
「あ、ああ、そうだな」
ラディウスはアルフォンスに対して頷くと、クレリテたちを追って走り出す。
――しかし……別のスイーツショップに行く理由、か。皆目見当がつかないな……
なんて事を思いながら。
当初はもう少しスイーツショップ巡りがあったのですが、長くなるだけなのでバッサリとカットして、今の形に落ち着きました。
……若干カットしすぎて、ギャグシーンっぽい部分が減ってしまった感もしますが……
ま、まあ、それはそれとして次回の更新ですが……2月14日(月)を予定しています!




