第2話 街へ赴いて。スイーツショップとクレリテ。
「――んで、メルメメルアにはどこを薦めたんだ?」
「まず、北区の『スターライトファーランド』に『アルフレッドズ・ケーキハウス』、それから東区の『アジュールサイド』に『輝ける実の樹木亭』、更に南区の『耀紋庵』と西区の『フルーツショップ・シャイニング』、そして中央区の『セレスティアルベリー』ですね」
「……観光名所的な所を薦めたのかと思ったら、全部スイーツショップじゃねぇかよ!」
問いかけに答えたリゼリッタに対し、そんな突っ込みをアルフォンスが入れた所で、
「でも、この都市は観光地というわけではないのだわ。むしろ、簡単に立ち入れる場所ではないのだわ。だから、観光名所の方がスイーツショップよりも少ないのは当然なのだわ」
と、そんな風に言ってくるクレリテ。
「ああ……まあそうか。――逆に考えると、そんな場所なのにスイーツショップは充実してるっつーのが、なんとも不思議だな。……っと、ここに突っ立ってても仕方ねぇし、とりあえず近い所――中央区の店から行ってみるとすっか」
クレリテの言葉に納得しつつ、アルフォンスが歩き始める。
「先程の疑問ですが、この都市には聖女や準聖女、その他諸々、何気に若い女性が多く暮らしていますからね。ある意味では必然的であると言えなくもないと思いますよ。神剣教会は別にスイーツを食べる事を禁止しているわけではありませんからね」
アルフォンスの疑問に対し、そう説明するリゼリッタ。
それを聞いたアルフォンスは、顎に手を当てながら「たしかに」と、再び納得の表情で短く返事をする。
「かくいう私も、ここに来る時は、時間を見つけてあちこちのスイーツショップに行ってるのだわ。そして、そこであちこちの聖女や準聖女と情報を交換しているのだわ」
「来ているはずなのに姿を見かけねぇ事が時々あると思ったら、そんな事してたのか……」
「異端審問執行官としては、聖女や準聖女から情報を得るのは重要な活動のひとつなのだわ!」
「……まあ、否定はしねぇけどよ……」
アルフォンスが肩をすくめてそう返した所で、これまでの会話に度々出てきた、、『準聖女』という単語が気になったラディウスが問いの言葉を投げかける。
「なあ、聖女ってのは『古代のガジェットのセキュリティシステムに適合した人物』だってのは理解出来るが……その準聖女ってのはなんなんだ?」
「ああ、簡単に言やぁ『セキュリティシステムに適合しなかった』が、聖女として扱っても良いと思えるような何らかの高い技術や知識を持つ者の事だ。もっとも、公には使われていない身内向けの非公式な尊称……のようなもんだけどな」
と、そんな風に説明するアルフォンス。
「私もその準聖女なのだわ!」
「……ああ、クレリテはセシリアの持つ剣には適合しなかったけど、セシリア並の戦闘技術を有してるし、暗さ……異端審問執行官としては優秀だからな。あと、一応王族だし」
アルフォンスは胸を張るクレリテへと顔を向けながら、そう言って肩をすくめる。
「そうですね。一応王族――ロイヤルなアサシンですからね」
「……どうしてふたり揃って『一応』を強調するのだわ……っ! っていうか、ロイヤルなアサシンって何なのだわっ!」
憤慨するクレリテを見ながら、ラディウスは心の中でアルフォンスとリゼリッタに同意した。
「まあ気にすんな。ほれ、ちょうど『セレスティアルベリー』が見えてきた事だし、王女殿下に何か献上してやるぜ」
「……はぁ……仕方がないのだわ、マキシマムベリーベリータルトで良いのだわ」
「古今東西、様々な『ベリー』をふんだんに使った甘味と酸味のバランスが絶妙なタルトですね。お高いのであまり買えないんですよねぇ。でも、せっかくなので食べたいですねぇ」
クレリテに続く形で、そんな解説を口にしながらアルフォンスを見るリゼリッタ。
そして更に――
「ふむ、話を聞く感じだと、なかなかうまそうなシロモノだな」
と、顎に手を当てながら、ラディウスもそんな風に言う。
「……へいへい。全員分買えばいいっつー事だな、ったく……」
リゼリッタとラディウスの言葉を聞いたアルフォンスは、そうため息混じりに返事をし、やれやれと首を横に振ったのだった。
ロイヤルアサシン……なんだか、SRPGの『クラス』名っぽい感じですね……
まあ、それはそれとして……次回の更新ですが、2月11日(金)を予定しています!




