第4話 秘されしモノ。高度な知識と技術を持つ者たち。
「ん? どういう事だ?」
アルフォンスがクレリテの方を向き、そう言って首を傾げる。
クレリテはそれに対し、「実は……」と切り出し、メルメメルアの話――ラディウスと出会って今に至るまでの話――を、アルフォンスたちに語り始めた。
……
…………
………………
「なるほど……。甲板でメルメメルア様と何か話をしているのは見えていましたが、そのような話をしていたのですね」
「帝国最高クラスの鑑定士であるメルが、どうしてラディと行動を共にしているのか気になっていたのだわ」
リゼリッタの言葉に頷いてそう答えるクレリテ。
「で、その理由が、今クレリテが話した事……つーわけか」
「あのアルベリヒが古代の人間だったとはな……。常人離れした……というのがしっくりくるような、凄まじく高度な知識をどこで得たのかと疑問に思っていたが……なるほどな、ある意味納得だ」
アルフォンスとデーヴィトがそんな風に言った所で、
「しかし、マインドコントロールとはいえ、こんな大陸全土に及ぶような広範囲の人間の思考を操作出来るものなのでしょうか……」
と、顎に手を当て、解消出来ない疑念を口にするリゼリッタ。
「……普通に考えたら無理だろう。だが、奴――アルベリヒが古代の人間であるのなら、話は変わってくる」
「と言いますと?」
リゼリッタがデーヴィトに対して首を傾げてみせると、デーヴィトは腕を組み、一呼吸置いてから、
「古代文明――彼の時代の技術は、我々の想像を遥かに超えるものだ。なにしろ彼の時代には、大陸の端と端くらいの距離が離れていても、会話をする事が出来たり、ありとあらゆる情報を瞬時に得る事が出来たりするような、とんでもない魔法――ガジェットがあったくらいだからな。そういった物を使い、大陸全土に魔法の効果を及ぼす様な事が出来たとしても、なんら不思議ではない」
と、そんな風に説明してきた。
「まあ、たしかにそうですが……」
「……実際、この帝都とその周辺では『術式通信』という、それに近しいモノが使われ始めているだろ?」
イマイチ納得しきれていなさそうなリゼリッタに、デーヴィトは更にそう告げて懐からガジェットを取り出してみせる。
それはメルメメルアが使っている物と同じ、術式通信用のガジェットだった。
「もしかして、これを作り出したのは……?」
「ああ、アルベリヒだな。……正確に言うなら、『アルベリヒに協力する技術者たち』だけどな」
リゼリッタの問いの言葉に頷いてみせるデーヴィト。
「……なるほど、な。想像以上にとんでもねぇ人物だな……」
「まったくなのだわ。ラディと良い勝負なのだわ」
肩をすくめるアルフォンスにそう返し、クレリテはやれやれと言わんばかりの表情で首を横に振りながら、呆れとため息の混じった言葉をした。
「ああ、そうだな」
アルフォンスは同意の言葉を口にしつつ思う。
――ラディウスの知識や技術は古代文明のそれとは別の意味で高度だからな。
ラディウスがあれらの知識と技術をどこで得たのか……いや、ラディウス自体は特殊な出自ではない。おそらく、ラディウスの一族が何かを秘匿している……と言った所なのだろう。
そして、セシリアの父親はその辺りに関わっていた可能性があるな……
と。
……そのアルフォンスの推測は、かなり的外れな推測なのだが、ラディウスが転生者であり、更に未来から時を遡って来ている事など知る由もないアルフォンスが、その真実に自力で気づくのは不可能に近い話なので、仕方がないと言えば仕方がない話である。
セシリアの父親に関しては、1~2章で少し触れた以外、ほぼ話が出てきていないんですよね……
まあ……それを言うとラディウスの生まれた村もそうなのですが。
それはそれとして次回の更新なのですが、来週中盤に諸々の都合がある関係で、更新期間が普段より2日ほど多く空いてしまう状況でして、片方の間隔を開けすぎるよりは、前後の間隔を均一にする方がよいのでは……と思いまして、次回の更新を普段より1日ほど遅らせる事で、更新間隔を同じくしようと思います。
なので、次は2月1日(火)に更新するつもりです。
そして、その次が2月5日(土)の更新を想定しています。
その次からは、普段の更新間隔に戻せると思います。




