第5話 ガジェットの力。妖姫を縛る鎖と魔工士。
新年、あけましておめでとうございます!
「――つーわけで、ラディウスたちは聖木の館の攻略準備に入った感じだ」
「なら、こっちも色々動き出すとするのだわ。メルの家に行って、頼まれていた本――『加工素材全集』を回収しつつ、例のグロース・インヒビションとかいう代物の情報をどうにかして得たい所なのだわ」
アルフォンスの説明を聞いたクレリテがそんな風に告げる。
「そうだな。例の妖姫とやらの救出も同時に出来たら最高なんだが……」
「地下水路からレビテーションを使って侵入すれば囚われている監獄までは辿り着けると思いますが、ラディウス様ですら解除出来なかったという魔法の鎖――グロース・インヒビションをどうにか出来るかと言われると……」
アルフォンスの発言にそう返して首を横に振ってみせるリゼリッタ。
「だよなぁ……。……ま、今は欲張らずにグロース・インヒビションの情報を得る事に専念すっか」
「そうするのだわ。でも……ラディ並か、あるいは拘束魔法の技術に関してはそれ以上の宮廷魔工士なら、噂になっていても良い気がするのに、全然まったくこれっぽっちもそんな噂なんて聞いた事がないのだわ。不気味なのだわ」
アルフォンスへ返事しつつ、顎に手を当てるクレリテ。
それに対し、アルフォンスは頷いてみせると、
「たしかにな。……相当厳重に、完璧なまでに秘匿されていやがるか、あるいは既に死んでいやがるか、って所だろうな」
と、呟くように口にした。
「前者であれば、どこかに軟禁されていると考えるのが妥当ですが……そういう『怪しい場所』の噂などは宮殿内で聞いた事がありませんね」
「長い間メイドに扮して宮殿に潜入しているリゼの耳に入らねぇんなら、前者の可能性は薄い――つまり、後者である可能性が高い……って事か……?」
「まあ、皇族クラスしか知らない――あるいは、皇族の誰かがその魔工士であるという可能性もなくはないですけどね」
「ああなるほど、たしかに皇族――それこそ皇帝あたりが魔工士なら秘匿も難しくはねぇな……。軟禁する必要もねぇし」
「もしそうだとしたら、途轍もなく厄介な話になってくるのだわ……」
リゼリッタとアルフォンスと会話を聞いていたクレリテがため息混じりにそう言って、やれやれと首を横に振る。
「そうだな。皇族に口伝でしか伝わらない秘術……とかだったら面倒くさい事この上ねぇ話になりやがんな」
「そうですね。まあなんにせよ、現状では何を話しても推測の域を出ないので、もう少し情報を得たい所ですが……私ひとりでは、さすがに厳しいですね。なにか潜入に使える良い魔法の組み込まれたガジェットがあれば別ですが……」
「私が使っているガジェットならそういう魔法もあるのだわ。……でも、向こう側の世界ならともかく、こちら側の……しかも皇帝の住む宮殿ともなると、魔法へのセキュリティが段違いなのだわ。ほぼ確実にバレる気がするのだわ」
腕を組みながらそんな風に言うクレリテに対し、
「そうですね。皇帝宮殿内のセキュリティはある程度把握していますが……あれは相当な代物です。並の魔法ではあっさり看破されてしまうのが関の山ですね」
と、頷き同意するリゼリッタ。
腕を組んで「うーん……」と唸りながら考える3人。
そして、ひとしきり考え込んだ後、
「……もういっそ、ラディに頼んで高レベルな潜入用魔法の組み込まれたガジェットを作って貰えば良い気がしてきたのだわ。ラディならセキュリティの詳細情報があれば、それを上回る物が作れるような気がするのだわ」
なんて事をクレリテが呟くように言ったのだった。
というわけで(?)新年1回目の更新はアルフォンス組の話からスタートです!
しばらく、ラディウス組もアルフォンス組もこちら側の世界がメインになると思います。
といった所でまた次回! 次の更新は正月の都合で少し空きます……
おそらく、1月5日(水)か1月6日(木)のどちらかになります!
(今の所は、1月5日に更新出来る想定です!)




