第3話 ガジェットの力。4度目のリンク。
ラディウスがあれこれと思考を巡らせていると、ルーナが顎に手を当ててラディウスとガジェットを交互に見ながら、
「共鳴……ねぇ。だったら、このガジェットも自動的にラディたちとリンクしたりする……のかしら? これ、ビブリオ・マギアスの人間が持っていた物なのよね?」
という問いの言葉をルーナが発した。
「ああ、たしかにビブリオ・マギアスの人間が持っていたモンだな」
「――その可能性は十分にある……というよりむしろ、ほぼそうなる気がするな」
「ふーん。……えいっ!」
アルフォンスとラディウスの返答を聞いたルーナが、そんな軽いノリでガジェットに手を伸ばし、触れる。
すると次の瞬間、ラディウスとセシリアから、キィンという甲高い音が続けて響き渡った。
「あ、この感じ……共鳴したんじゃないかな?」
セシリアがそう口にした通り、続けざまに3度目の同じ音が響く。
それはルーナが触れているガジェットからだった。
そしてそれに続くようにして、3人の視界が真っ白に塗りつぶされる。
が、それはほんの一瞬であり、すぐに木々の生い茂る森――聖木の館のエリミネーターどもが犇めく森――が視界に飛び込んできた。
「向こう側の世界に来たって事は……」
ラディウスがそう呟きながら横へ視線を向けると、そこには案の定、ルーナの姿があった。
――やっぱりと言うべきか、自動的にリンクしたか。
……しかし、アルフォンスたちの方のリンクは、自動ではなく任意だったとは想定外だ。
どうしてこの差があるのか、『共鳴』が何で起きるのか……この辺りを調べれば、連中が何をしようとしているのかが、見えてくるような気もするな……
周囲をキョロキョロと見回すルーナを眺めながら、ラディウスはそんな事を思う。
「ほ、本当に見たこともない場所に一瞬で飛んできたわ……」
「ここが並行世界だ。この森の先に――」
ルーナに対し説明しようとした所で、戦闘の音――破砕音やら魔法の発動音やらが次々に響いてきた。
それは、セシリアたち前線にいる3人によるものだった。
流石というべきか、3人ともこちらへ転移してくるなり、即座に迫ってくるエリミネーターたちへの攻撃を開始していたのだ。
「戦闘中? って! なんだか凄い数の『敵』をマリス・ディテクターが感知してるわね!?」
「ああ、もうマリス・ディテクターで確認したのか。俺もあれほどの戦力を有しているとは思わなかったが、アルフォンスの説明だと、一個旅団が駐屯しているという話だったから、まあ納得と言えば納得だな」
「一個旅団?」
「1500~6000人程度の兵士の集団を示す単位だな。で、今仕掛けてきている連中の旅団は、ちょうど中間くらい……3500人程度らしい」
「魔軍事変の時の魔物の数並ね……」
「そう言われるとたしかにそうだな」
ラディウスとルーナがそんな会話をしている間にも、戦闘音が響き続ける。
「というか、そろそろ参戦した方がいいのかしら……?」
というルーナの言葉に、
「まあ、参戦してもいいが、その前に色々準備したい物があるし、一旦戻るとしよう」
ラディウスはそう返すと、大封印前の事を思い浮かべる。
そしてすぐに視界が変わり、大封印の前へと戻ってきた所で、
「戻ってくるの早くない? まだ、30ちょっとしか倒してないんだけど」
なんて事を剣を手に持ったまま少し不満げに言ってくるセシリア。
それを聞いてラディウスは思う。
――セシリアが魔法を使った形跡はなかったから、剣だけで30以上ものエリミネーターを、あの短時間で倒したって事だよな……。なんというか、相変わらず剣の腕は凄まじいな。
と。
ちなみに……一応の補足ですが、サブタイトルの『4度目のリンク』というのは、セシリア、カチュア、メルメメルアときて、今回のルーナで4回目の共鳴だという意味です。
といった所でまた次回! 次の更新は、12月29日(水)の予定です!




