第21話 大封印と氷晶。待ち構えるルドガー。
影兵を蹴散らし、坑道を突き進むクレリテたち。
……と、その視界にマリス・ディテクターが示す目的の敵――ルドガーの存在を捉えた。
クレリテたちを待ち構えていた……と表現するのが適切な、そんな佇まいだ。
「やっとルドガーのもとに辿り着いたのだわ!」
初対面ではあったが、マリス・ディテクターによって既に目の前にいる、黒いコートを身に纏った片眼鏡の男がルドガーである事は分かっていた為、そう叫ぶクレリテ。
「辿り着いた……か。なるほど、こちらの位置を完全に把握していた……という事か。やれやれ、やはり神剣教会の相手は一筋縄ではいかないようだな」
そんな風に言い、呆れた表情で両手を広げ首を横に振るルドガー。
「ふふん、神剣教会の力を甘く見てもらっては困るのだわ!」
と言い放つクレリテを見ながらリゼリッタは、教会の力というよりも、ほとんどラディウスの作ったガジェット――魔法の力であると思うも、口にはしない。
教会の力だと思わせておく方が、色々と都合が良いからだ。
――特に『英雄ラディウス』という強力すぎるカードは、徹底的に隠蔽するに限りますからね。
その為に、他が多少犠牲になっても……
そんな事をリゼリッタが考えていると、
「影兵が潜んでいる様子はありませんです」
と、カチュアが言う。
「つまり、今回の騒動の首謀者が、ひとりでここで待ち構えていた……という事になるですが……一体何のために……?」
メルメメルアが小さく、もっともな疑問を口にする。
「どうしてそんなに余裕なのかはわかりませんが、切り札があるのなら、とっとと使った方が良いと思いますよ? それとも、先に今回の騒動の理由――ここを制圧して何をするつもりだったのか、あるいは何をしていたのかを話しますか?」
メルメメルアの代わりに問う形で、リゼリッタが言葉を投げかける。
「何、余裕などないさ。ここでこうして、逃げも隠れもせずに待っていたのは、単に何年も掛けて仕込んだ作戦をあっさりと察知し、そして瓦解させてくれた連中……それがどんな者たちなのか興味を持ったからにすぎない」
なんて事を言って一度言葉を切ると、一瞬だけカチュアの方へと視線を向けた後、
「そして……まあ、色々と納得出来たというものだ。――故に、もうここにも貴様らにも用はない」
と、言葉を続けた。
――何故、今、カチュアさんの方を……?
いえ……もしや……
視線の動きに気づいたリゼリッタが、『その意味』を思考し始めた所で、
「私たちの方は用があるのだわ! そっちに用がないのなら、黙って私に拘束されるのだわ!」
なんて事を言い放つクレリテ。
「ここで何をしていたのかを話すつもりは一切ないのでな。黙って拘束されるつもりなど微塵もない。ただし……逃げるつもりもないがな」
「それはどういう事なのです?」
「――先程そちらが言った通り、切り札を使わせて貰う、という事だ」
メルメメルアの問いかけに対しそう答えるルドガー。
リゼリッタはその言葉を聞くなり思考を中断し、構える。
メルメメルアとカチュアも同じように、次の動きに備えて構えた。
しかしクレリテだけは、
「だったら、切り札とやらを使われる前に捕縛するのだわっ!」
などと言い放ち、ルドガーに向かって突っ込む。
それと同時に、ルドガーの足元に巨大な魔法陣が出現。
「クレリテさん! 下がってくださいです!」
正体不明の魔法陣を警戒し、そう警告の声を発するカチュア。
クレリテもその警告どおり急停止しようとして……気づく。
そして気づく。
――っ!? 違うのだわっ! これは……この魔法陣は……
クレリテには、その魔法陣に見覚えがあった。
――レスティア村の時のアレなのだわ……っ!
そう……それは、レスティア村の一件――魔軍事変の折に、首謀者たる仮面の術士を喰らい飲み込んだ『顎門』を顕現させる魔法陣だったのだ。
なにやら久しぶりとなるモノが登場しましたが……? という所でまた次回!
そして、その次回の更新なのですが……先日記載しました通り年末進行の都合で、現在の更新間隔よりも1日多く間が開く形となりまして……12月4日(土)を予定しています。




