第14話 大封印と氷晶。坑道にて待つもの。
一方その頃――
「――というわけで、ビブリオ・マギアスに関係があるかもしれないのだわ」
「まさか、こんな所にまで手を伸ばしてきているだなんて、思いもしませんでしたです」
アルフレッドの話を伝えるクレリテに対し、そう返すカチュア。
横のメルメメルアも同意するように頷いた。
「……普段であれば活気に満ちている加工施設や運搬施設が静かな事が、その可能性の高さを物語っていますね……」
「たしかにその通りなのです。単なる『交代』だとしたら、これらが稼働していなければおかしいのです」
坑道へ続く道を歩きながら周囲の建物を見回し、そんな事を言うリゼリッタとメルメメルア。
「マリス・ディテクターを使っても反応がありませんです」
「まだこちらに気づいていない――敵意や悪意……害意を持っていないだけという可能性もあるですが……」
「さすがに、こう堂々と正面から歩いていって気づいていないという事は考えられませんね。……というより、気配そのものが周囲の建物からは感じませんし。まあ……気配を消していたらどうにもなりませんが」
カチュアとメルメメルアの言葉に続くようにしてリゼリッタがそう返し、目を細めながら近くの建物を見る。
「もし気配を消しているのであれば、それはこっちを見張っているのと同義なのだわ。もしそうなのなら、害意――『敵意』や『悪意』を感知するマリス・ディテクターに引っかかるはずなのだわ」
「たしかにその通りですねです」
「とはいえ……相手がビブリオ・マギアスならば、何があるか分からないのだわ。だから、一応索敵は継続しておく方が安全なのだわ」
クレリテはカチュアにそう返しつつ、マリス・ディテクターによる索敵を継続する。
「それは間違いありませんです。このまま私も索敵を継続しますです」
「私はそのラディウスさんのガジェットを持っていないので、そちらはお任せします」
カチュアの返事に続く形でリゼリッタはそんな風に言い、周囲の建物への気配察知に注力する。
メルメメルアは念の為に、『マリス・ディテクター』とは感知方法の異なる自前のガジェットの索敵魔法を使い、周囲を探る。
……と、そこから少し歩いた所で、クレリテとカチュアのマリス・ディテクターが反応する。
「っ! 前方に『影兵』とかいう名を持つ敵性存在がいるのだわ!」
そのクレリテの声を聞いたカチュアが、マリス・ディテクターの情報を頭の中で確認しつつ、
「……影兵……影……。まさか、魔軍影将の配下……とかでしょうかです」
と呟くように言うと、メルメメルアがそれに対して顎に手を当てながら答えた。
「……『影兵』という名称からすると、その可能性は十分にありえるですね……」
「――坑道の入口が見えて来ましたが……いかにも採掘師といった様相の人たちが、入口を塞ぐように立っていますね」
「――マリス・ディテクターの感じからすると、あれが影兵の変装なのは間違いないのだわ。ただ……『足りない』のだわ」
「足りない……ですか? それは、索敵に引っかかった数とあそこにいる人数とが合わないとか、そういう事ですか?」
「その通りなのだわ。あの入口を通せんぼしている連中だけでは、感じ取れる『影兵』の数の半分にも満たないのだわ」
「気配はあの面々からしか感じられませんね……。つまり……」
「……周囲に潜んで待ち構えている……という事になるのだわ」
前方にある坑道の入口――そこに立つ採掘師の様相をした者を見据えながら、リゼリッタとクレリテがそんな事を話す。
その話を聞きながらメルメメルアは、
――これは、一気に襲いかかって来る可能性を考えておいた方が良さそうなのです。
と、そう考え、念の為に準備をし始めた。
なにやら、如何にもな名称を持つ連中が出て来ましたね……
といった所でまた次回! 次の更新は、11月12日(金)を予定しています!




