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第7話 魔工士は思う。ルーナも思う。

「え、えっと……そ、その話は置いといて……」

 ルーナはそう言うとマークスの方へと顔を向け、立ち上がりながら話題を変えるように問いかける。

「……マ、マークスおじさんは、どうしてあんな物騒な腕輪型のガジェットを持っていたの? というより……あれって、どこで手に入れた物なの?」


「あ、たしかにそれは俺も気になりますね。先程、壊しても良いかと尋ねた際に、あまり良くはないと仰っていましたが……」

 ラディウスもその事が気になったので、ルーナに同意する形でそう言ってマークスを見る。


「……あれは、伯爵様――ヴィンスレイド閣下から戴いた物なのです。なんでも、グランベイルの北にあるガーディマ遺跡で発見された物だそうで、あれを身に着けると防御魔法が扱えるようになる為、商人の私にはちょうど良いだろうと仰られまして……」

 その説明を聞いたラディウスが、先程壊した腕輪を鞄から取り出し、覆っている布を開いて眺める。

「……なるほど。たしかにいくつかの防御系の魔法が使えるようになりそうな感じですね」


「伯爵様は、シャドウコラプスに気づいていなかったのかしら?」

「んー、まあ……マリスディテクターを使わないと見えないし、そうかもしれないな……」

 ルーナに問われたラディウスはそう答えながら、腕輪をしまう。

 

「……?」

 ラディウスの言葉に、ルーナはなんとなく歯切れの悪さを感じた。


 ――この場じゃ言えない……って事なのかしら?

 と、ラディウスの方に視線を向けながら思うルーナ。


「――呪物の詳細について、後で調べてみますので、なにかわかるかもしれません。気になる点があった場合は、再びお尋ねしてもよろしいですか?」

 マークスにそう問いかけるラディウス。

 それに対しマークスは頷き、

「もちろんです。ただ、その頃にはこの屋敷ではなく、カレンフォート市の方に戻っているかもしれませんので、その際は『クレイベル商会』までいらっしゃってください。商会の者には伝えておきますので、誰かにお名前を名乗って、私をお呼びいただけますでしょうか」

 と、そんな風に告げた。

 

 そのマークスの言葉を聞き、

 ――クレイベル商会というと……食料品から雑貨、果ては武具まで色々な物を取り扱う商会だな。時を遡る前は、割と良く利用したものだ。

 しかし、カレンフォートか……。クレリテとマクベインさんが向かった先だな。今頃、何をしているんだろうか……?

 なんて事を思いながら、 

「わかりました。ありがとうございます」

 と、軽く会釈をしてお礼を述べるラディウス。

 

「……さて、あまり長居してもゆっくり休めないでしょうから、俺はこの辺りで失礼させていただきます」

「あ、たしかにそうね。それじゃあ町へ帰りましょうか」

 ルーナがラディウスの方を見て同意の言葉を紡ぐ。


「何もないとは思うけど、私は念の為、今日一日この屋敷に滞在して様子を見るわ。明日の昼すぎには戻るから、あの人にそう伝えておいてくれるかしら?」

 そう言ってルーナの方を見るマリエル。

 

ルーナはそれに頷き、承諾すると、

「――マークスおじさん、それじゃまたね。今度は元気な姿で会える事を願っているわ」

 と挨拶を述べて、部屋から出ていく。

 ラディウスとマリエルもそれに続いて部屋から出る。


                   ◆


「……ねえ、ラディ? さっき私の問いかけに対して、凄い歯切れの悪い返し方をしてきたけど……マークスおじさんの前では言えない事でもあったの?」

 玄関に向かって歩いている途中で、ルーナがラディウスにそんな事を尋ねる。


「あ、ああ、たしかにその通りだけど……よく気づいたな」

 驚き、そう答えるラディウスに、ルーナは胸を張って、

「ふっふーん、すごいでしょ! 昔から、なんとなーくそういうのがわかるのよねっ!」

 と、言った。

 

 その様子を見ていたマリエルは、ルーナに対して何か言いたそうな顔をするが、言っても無駄だと考えたのか、何も言わずにため息を付いて首を振った。


「……あの場で言うと、心身に負担を掛けるだけになると思って言わなかったんだが……マリスディテクターを使わないと、たしかに常駐状態のシャドウコラプスは見えない。だけど……だ。普通、遺跡から見つかった物を、何も調べずにそのままにするって事はありえないと思うんだよな」

「あ、なるほど……。たしかにそうね……。鑑定するなりなんなりしないと、遺跡で拾ったものなんて、危なくて使いたくないわね……。酷い目にあう事もあるし……」

 ルーナの代わりにマリエルがそんな風に言う。何故か遠い目をしながら。


「……えっと、お母さん? 昔、なにかあったの?」

「ちょっとしたハプニングがあったのよ。まあ、気にする程の話しではないわ」

 ルーナの問いかけに、マリエルはそんな風に返すが、ルーナは絶対ちょっとしたハプニングじゃすまない何かがあったのだろうというのを、なんとなく感じ取った。

 もっとも、言いたくなさそうなので、あえて深堀りするつもりはなかったが。


「まあいいけど……。えっと……そうすると、あれは鑑定されていたって事?」

「そうだな。実際、あれを身に着ければ防御系の魔法を使えるようになるって事は、判明していただろ?」

「あ、たしかにそうね。あ、でも、そのガジェットで何の魔法が使えてどう使えばいいのか……みたいなのって、鑑定しなくても身に着けた瞬間わかるわよね? それこそ、試しに腕に付けてみるとかすれば………………あああああぁぁぁぁぁっ! 無理っ! それは無理だわっ!」

 ルーナは言葉を紡いでいる最中に、一度装着したら外せなくなる事に気づき、屋敷に響き渡る程の声量で自身の発言を否定した。

 

「ちょっとルーナ、声が大きいわよ……。――さすがにここからなら、マークス兄さんにまでは聞こえないとは思うけど……」

 マリエルが腕を組んで、怒りと呆れの混ざった声でそう嗜めると、ルーナはハッとなって自身の口に両手を当て、バツの悪そうな表情をする。


「ご、ごめんなさい……」

少し不穏な感じに……

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