第11話 大封印と氷晶。推測するメルメメルア。
「……? その味、リゼには合わなかったのだわ?」
というクレリテの問いかけに、「さ……」とだけ返すリゼリッタ。
「さ?」
「さいっっっっっこぉぉぉぉぉうですっ!! まさか、麺とパンの組み合わせが、ここまで美味しいとは思いませんでしたっ! 驚きですっ!」
クレリテが首を傾げた直後、リゼリッタはやきそばパンを手に持ったまま、喜色満面という言葉がぴったりな程の幸せそうな表情で、声を大にしてそんな事を言い放つ。
「これは是が非でも作り方を聞き出さねばなりませんね……」
「え、ええっと……そ、そこまで気に入ったのだわ……?」
妙な決意をしながらやきそばパンを食すリゼリッタを見ながら、クレリテは少し引き気味にそう返す。
「はい! 炭水化物に炭水化物を組み合わせという、最早、炭水化物の暴力と言わんばかりの方法でこれほど美味しいものが出来上がるとは……想定外すぎます!」
なにやら興奮しながらそんな事を口にすると、そのまま周囲の人間を巻き込んで熱弁を振るい始めるリゼリッタ。
先程よりも更に引いてリゼリッタの話を聞くクレリテを眺めながら、
「……あそこまでテンションが上がるとは思わなかったのです」
と、呆れた様子でため息交じりに言うメルメメルア。
それに対し、頬を人差し指で掻き、同意の言葉を口にするカチュア。
「そ、そうですね……です」
そしてカチュアは、クレリテとリゼリッタを交互に見た後、周囲を――ふたりの会話に耳を傾けている人間がいない事を――確認してから、
「それにしても、炭水化物という言葉が出てくるあたり、やはり向こう側の人だというのが良くわかりますです」
なんて事をメルメメルアへ向かって言った。
「こちらの世界では使われていないのです?」
「はいです。こちら側は、まだそういうのを研究するような文明レベルではありませんです。まあ、ラディウスさんはたまに使っていますですが……」
「ラディウスさんは別格というか……そもそも、この時代の人ではない……と思うのです」
「え? そうなんですか? です」
少々驚きつつも、たしかにその可能性は高そうだとカチュアは思い、
「それはまたどうしてなのですか、です」
と、問いの言葉を続ける。
「最初に出会った時に、どこかから飛ばされて来たと言っていたですが、その時のラディウスさんの説明は、まるで未来あるいは過去から飛ばされてきたかのような感じだったのです。――そして、『こちら側の世界から転移してきた』事が分かった今、今度は『そうであるなら』辻褄が合わない発言が出てくるですよ」
「なるほどですです。たしかにラディウスさんは、こちら側の世界から転移した、というだけでは色々と説明がつかないのは間違いありませんです」
そう口にするカチュアに対し、メルメメルアは頷いて見せる。
「なので、おそらく未来か過去から飛ばされてきた後、更に向こう側の世界に飛んできたのではないか……と、私は考えているです」
――まあもっとも、それ以外にも何かありそうな気はするですが……
なんて事を思いながら……
急にハイテンションになるリゼリッタの回でした(何)
とまあそれはそれとして、何やらメルメメルアにはバレかけていますね……
といった所でまた次回! 次の更新は、11月3日(水)の予定です!




