第6話 大封印と氷晶。撃退、復元、そして扉。
クレリテとメルメメルアは周囲を警戒するも、ウンゲウェダ・ドラウグが再び復活するような事はなかった。
「復活する気配なし……です。どうやら完全に倒せたみたいなのです」
「ふう……まさか横から来るとは思わなかったのだわ……。リゼがいなかったら危険だったのだわ……」
クレリテはメルメメルアに対しそう返した所で、ハッとした表情になり、
「って! リゼ! 怪我は大丈夫なのだわ!?」
と呼びながら、リゼリッタの方へと振り向く。
「――問題ありません。カチュアさんの回復魔法で傷は塞がりました。何故かついでに血も消えましたが……」
まるで怪我などしていなかったかのように、冷静にそう返事をするリゼリッタ。
そこへカチュアが説明の言葉を発する。
「あ、使ったのは回復魔法ではなくて、レストア――復元魔法ですです。なので、傷を塞ぐだけではなく、服も元の状態にもどっているというわけですです」
「え……? 復元魔法にこれほどの性能が……?」
「まあ、ラディウスさんが改良した魔法なので、そんなものなのです」
驚くリゼリッタに対し、さも大した事のない当然の話だと言わんばかりの表情で、そんな風に答えるメルメメルア。
「その通りなのだわ。――私たちも治療と修理が必要なら使っていくのだわ」
「わかりましたです。あ、濡れた服も元に戻しておきましょうです」
クレリテとカチュアもまた同じような感じであった。
――みなさん、英雄……ラディウスさんが生み出す段違い過ぎる魔法に慣れすぎて、感覚がおかしくなっていませんかね……?
レストアの件だけではなく、ああもあっさりとウンゲウェダ・ドラウグを退けた事それ自体も、驚愕するレベルなのですが……
でもまあ……クレリテが全面的に信頼し、アルがその力を欲っするその理由が良く分かるというものです。
……と、そんな事を思うリゼリッタだった。
◆
一方その頃――
「なるほど、氷晶の方はクレリテたちに任せたのね」
「ああ。あのメンツであれば、問題なく取ってきてくれるだろうしな」
ルーナの言葉に対し、頷いてみせるラディウス。
――メルメメルア、リゼリッタ……。知らない名前の人物がふたりも増えているわね……
特にメルメメルアという人の方は、ラディ、セシリア、そしてカチュアちゃんの共通の知り合いみたいだけど……どういう関係なのかしら?
それに……いつここに来て、そしてどうやって合流したのかも謎だわ。
どうも私の知らない『何か』が、この4人の間にはあるっぽいけど……うーん、一体なんなのかしらね?
一番考えられるのは、ラディとセシリアの幼少期の頃の知り合いという線だけど……そこにカチュアちゃんが絡んでくるのが良く分からないのよね……
ルーナがモヤモヤしたものを抱きながらそんな思考を巡らせていると、
「ついたぞ。ここが大封印だ」
というアルフォンスの声が聞こえてくる。
ルーナが顔を上げると、そこには大小様々な魔法陣が、まるで歯車の如く組み合わさりながら回転しているのが、術式解析――マジックストラクチャー・オープンなどをせずとも目視出来る、そんな奇妙で巨大な扉がそびえ立っていた。
ウンゲウェダ・ドラウグとの戦闘が終了した事もあり、一度、大封印の方へと話が移ります。
……とまあ、そんな所でまた次回!
そしてその次の更新ですが、少し空いてしまい申し訳ありませんが、10月18日(月)を予定しています!




