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第6話 魔工士は受け取る。目下の目的だった物を。

「……え、えーっと……。王都の研究機関が性に合わなそうだから行くのをやめて、代わりになんとなくグランベイルに来た……と、そういう事でいいのかしら?」

 一番早く立ち直ったルーナが、額に人さし指を当てながらラディウスの説明を反芻するかのように、そう問いかける。

 

「ああ、そういう事だ」

 頷くラディウスに対し、更に問いを投げかけるルーナ。

「で、魔工屋でも開こうと思っている、と?」

「そう」

 

 さらりと答えたラディウスに、ルーナは理解が追いつかず、しばし難しい顔をしながら唸った後、諦めたように手を広げ、そのまま再び絨毯の上に寝転がった。

 そして、天井を見ながら呆れた声で言う。

「……わ、わけがわからないわ……。王都の研究機関って、この国の魔導技術関連の研究施設の中では一番凄い所なのよね? そこからの誘いを、そんな風にあっさり無視するなんて……」

 

「……ま、まあ、たしかに驚きだね。もっとも僕としては、そのお陰でこうして助かったのだから、結果的には良かったと言えるけど……ん?」

 マークスは、ルーナに対しそう言った所でなにかに気づき、ラディウスの方を見る。

「――という事は……もしかしてラディウスさん、グランベイルで魔工屋を開けそうな物件を探していたりしませんか?」


「あ、はい、一応探しています」

 というラディウスの返答を聞いたマークスが、マリエルの方へと顔を向けた。


 それに気づいたマリエルがマークスを見る。

 そして、ふたりは頷き合い、

「でしたら、ちょうどいい空き工房があるので、そちらを今日のお礼として、お譲りいたしましょうか?」

 と、マークスからラディウスに告げた。

 

「……俺としては助かりますが、さすがにそこまでの物を戴くわけには……」

 巷で呪物と呼ばれているガジェットを1つ無力化した程度で工房を貰うのは、どう考えても対価の貰いすぎというものではないだろうか……と考えたラディウスが、そんな風に答える。

 

「いえいえ、私からしたらそれでもお礼し足りないくらいですよ。……それに、その工房は長らく使われていない上に買い手もおらず、大きな維持費がかかるだけの物件となってしまっていますからね。優秀な魔工士のラディウスさんに使って戴いた方が、工房も喜びますし、私としてもありがたいのです」

 そう言って笑みを浮かべるマークス。

 実際には維持費は大してかかっていないのだが、あえてそういう風に言った。


「なるほど、そうなのですか……。そういう事でしたら……せっかくですし、受け取らせていただきます」

「ありがとうございます」

 ラディウスの言葉を聞き、そうお礼の言葉を述べて頭を下げるマークス。

 それから少し済まなそうな表情をして、

「お受け渡しの手続きなどが必要となりますので、申し訳ございませんが、3~4日ほどお待ちいただければ……と」

 と、言った。

 

「い、いえ、そこまで急いでいるわけでもありませんので、体調のほうが快復なされてからゆっくりと手続きしていただければ……」

 そうラディウスが言うと、マリエルが一歩前に歩み出て告げる。

「その手続きに関しては、私の方で行うので気にしなくても大丈夫ですよ」


「あ、そうなのですか? ……では、お手数をお掛けいたしますが、よろしくお願いします」

 そう言って頭を下げるラディウス。

 

「あー、お母さんが対応するって事は、あそこかぁ……」

 寝転がったまま、そんな事を呟くルーナ。

 

 そのルーナを横目に見ながらマリエルがラディウスに問う。

「ちなみに、ラディウスさんはお幾つなんですか? 書類に記載する必要があるので伺っておきたいのですが……」

「あ、18になったばかりです」

 

「ええっ!? 私の1つ上なの!? 凄く落ち着いているから、もっと上だと思っていたわっ!」

 驚きの声を上げながら、跳ね起きるルーナ。

 

「そうねぇ……たしかに落ち着いているわねぇ……。ルーナにも、少しは見習って貰いたいものねぇ……」

 マリエルが頬に手を当て、ため息混じりにルーナの方を見て告げる。

 それに対し、ルーナは「うぐっ!」と呻いた後、

「ま、ま、まあ、その……お、追々なんとかするわっ!」

 なんて事を言った。

 

「追々なのね……」

 と、さらに深くため息をつくマリエル。

 

 それを見ながら、

 ――まあ……俺は年齢よりも31年――この世界に転生してくる前も入れたら、軽く80年以上は生きているからなぁ……

 無論、それを誰かに話すつもりは一切ないけどな。

 時を遡った時点で、例のガジェットは消失してしまっているし、仮に同じ物をもう一度作ったとしても、どうして急に発動したのかがわからない以上、証明する事が出来ない。

 だから、そんな話をしようものなら、面倒でややこしい事になるか、頭がおかしいと思われるか……そのどちらかにしかならないのは確実だしな……

 と、そんな事を思うラディウスだった。

というわけで、あっさりと工房を手に入れるラディウスでした。

ラディウスの実際の年齢は……結構なものです。



――――――――――

いつもの宣伝コーナー

本日同時に『サイキッカーの異世界調査録サーベイレコード』の方も投稿しています!

こちらも、よろしくお願いいたします!

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