第3話 大封印と氷晶。霧の中に響く魔法。
予定していた更新時間よりも遅くなってしまいました……
姿を顕したウンゲウェダ・ドラウグにより、メルメメルアたちの乗る船は大慌てとなった。
「この船よりもおっきいですです!」
ウンゲウェダ・ドラウグを見上げ、その姿に驚くカチュア。
「ここまで巨大なのはレアなのだわ」
「こういう場合はどうするのです?」
メルメメルアたちはさして慌てる事なくそんな会話をする。
「船に乗る警護要員や戦闘が可能な者で迎撃するのが基本ですね」
そう言いながら、自分たちのいる甲板を見回すリゼリッタ。
言われたメルメメルアが、リゼリッタ同様に周囲を見回すと、たしかに甲板に得物を持った者たちが集ってきているのが見えた。
「なるほどなのです。それなら、私たちも早速迎撃行動を開始するのです。先手必勝なのです!」
そんな事を言いながら、ウンゲウェダ・ドラウグを見据えるメルメメルア。
そのまま一呼吸置いてから続きの言葉を――否、呪文を発する。
「全てを焼き尽くせし矍鑠たる炎、幻の顎門より乱れ響かん――ファイリィ・リヴァベレイト!」
直後、多数の魔法陣がもの凄い早さで、ウンゲウェダ・ドラウグを取り巻くようにしてに次々と出現し始める。
そして、最後に一回り大きな魔法陣がメルメメルアの頭上に生み出されたかと思うと、そこから赤々と光る熱線が扇状に広がりながら放射された。
「グゥゴォアアアァァァアァアァアァァァァァアアアアアァァァッ!」
その身を穿ち貫き、焼いていく熱線に対し、ウンゲウェダ・ドラウグが怨嗟と憎悪の叫びを上げる。
しかし、それだけでは終わらない。
ウンゲウェダ・ドラウグを取り巻くようにして出現した魔法陣に熱線が当たった瞬間、熱線はまるで反射するかのようにしてその向きを変え、ふたたび襲いかかる。
それが何度も繰り返され、いつの間にかウンゲウェダ・ドラウグは四方八方から熱線の嵐を浴びる状態となっていた。
「ラディウスさんの魔法にこれほど耐えるだなんて、驚きなのですっ!」
メルメメルアはそんな風に驚くが、攻撃を仕掛けようとしていたウンゲウェダ・ドラウグの動きは完全に止まっており、そこかしこから砂のような物が溢れ始めていた。
その光景を見上げながら、リゼリッタが、
「十分すぎる程、効いている気がしますが……」
と、少し呆れた様子で呟くように言う。
「っ!? 攻撃が来ますです!」
カチュアの声の通り、ウンゲウェダ・ドラウグは大ダメージを受けつつも、どうにか態勢を立て直すと、鳥の骨を思わせる部分から、羽根の形をしており、先端の鋭く尖った黒曜石……と表現するのがもっとも近いような、そんな奇妙な物質を大量に放射した。
「くっ、障壁魔法を――」
周囲から聞こえてきたそんな声に、クレリテが被せる形で言い放つ。
「全て吹き飛ばせばそれで終わるのだわっ! ――暗き天穿つ龍の咆哮、紫電の柱とならん! ライトニングピラー・改!」
放たれたそれは、魔軍事変の折に、レスティア村で放った紫色の雷柱を発生させる魔法。
威力は中級――と言っても、ラディウスによって改良されている為、上級の魔法と比べても遜色ない代物と化している――だが、それで十分であった。
何故なら、ウンゲウェダ・ドラウグは断末魔の咆哮すらなく、あっさりと消し飛んでしまったからである。
「あ、あっという間に終わりましたですね」
頭上を見上げながらそう口にするカチュアに、
「――いえ、残念ながらアレは王女殿下並にしぶとい存在です。あれだけの高火力であっても、『完全に倒しきる』事は無理ですね」
と、リゼリッタ。
その直後、ウンゲウェダ・ドラウグの姿が消えたその場所から、
「オオォォォォオオォオォオオォオオオォンンンンンンンンンンッ!」
という昏い咆哮が響き渡った――
まあ、そんな簡単に倒せませんよね。
というわけで、また次回! 次の更新は10月7日木曜日の予定です!




