第1話 大封印と氷晶。街並みとリゼリッタ。
更新が遅くなりました……
「昨日はなんだかんだあって、あまり街の様子を眺める事が出来なかったってものあるが……こうやって改めて眺めてみると、水路の多い街だな」
船着き場で町並みを眺めながらそんな感想を口にするラディウスに、
「巨大な湖のど真ん中に作られた都だから当然と言えば当然なのだわ」
と、答えるクレリテ。
「この街を最初に作った人は、どうしてこんな湖の中心に、街を作ろうだなんて思ったのでしょう、です」
もっともな疑問を口にするカチュアに、
「たしかにそうなのです。なにしろ、向こう側だとこの湖には、古の時代の研究所と思しきものが沈んでいる以外、特に何も存在していない――街なんて影も形もないですし」
と返すメルメメルア。
「そうですね。向こう側では、帝国が版図を拡大するスピードが早かった事もあり、この辺りにあった国は、瞬く間にその支配下に置かれるか、跡形もなく滅び去る形となりましたからね。外的に備える為の湖に囲まれた堅牢な都市……というのは必要なかったのでしょう」
「なるほど、防衛的な意味が――って、ん?」
聞き覚えのない声に疑問を抱き、ラディウスたちはそちらへと顔を向ける。
否、クレリテだけは知己であったようで、
「ようやく来たのだわ」
と、その声の主――甲冑の腕と足部分だけを取り付けたかのような、そんな服を着た緑色の長い髪を持つ女性――に、言葉を返した。
「今日やる予定だった事を他の者に託す際、色々と説明が必要だったもので……少々手間取りました」
クレリテに対し、そう告げる女性。
「えっと……リゼリッタさん……です?」
メルメメルアが女性の言葉から察し、そう問うと、
「はい、今日はよろしくお願いいたしますね、メルメメルアさん。……ちなみに、何度か直接お会いしていたりするんですよ」
なんて事を告げるリゼリッタ。
「えっ!? そ、そうだったのです!?」
「まあ、冒険者として情報収集活動をしている際に、ギルドでの鑑定で何度かお世話になった程度ですし、さすがに覚えておられないと思いますが」
驚くメルメメルアに対し、リゼリッタがそう答える。
「うぅ。お、覚えていないのです……。申し訳ないのです……」
「あ、いえいえ、一日に何人もの冒険者の鑑定を行っているわけですし……むしろ、ひとりひとり覚えている方が驚きですので、お気になさらないでください」
申し訳なさそうな表情のメルメメルアに対し、リゼリッタがそんな風に言うと、
「そうそう、気にする必要ないのだわ。私も暗殺した人間の顔なんてこれっぽっちも覚えていないのだわ」
なんていう物騒な事をクレリテが続けて言った。
「あなた様はもう少し気にしてくれませんかねぇ……? 暗殺とかサラッと口にしては駄目ですよ? それと……今日の件も、もう少し早く言って欲しかったものです……」
と、ため息交じりに言うリゼリッタ。
「文句はアルに言うのだわ。昨日の夜に、リゼも連れていけと言われたのだわ」
そうクレリテに言われたリゼリッタは、呆れと怒りの入り混じったようなそんな表情で、
「……今一度、シメておかなと駄目ですかね……。こう、キュッと」
なんて事を雑巾を絞るかの如き手の動きと共に、呟くように口にした。
――クレリテの説明が足りてない気もするけど、この人もこの人で、教皇様相手にキュッとか言ってるし……
う、うーん……なんとなく、3人の関係性がわかるなぁ……
ふたりの話を聞いていたセシリアは、そんな事を思う。
そしてそれは、その横に立つラディウスも同じだった。
今回から節が変わります!
(……というより、前の節が長くなりすぎていたので、一旦区切りました)
そんなこんなでまた次回! ……次の更新は3日後、10月1日金曜日の予定です……




