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第11話 メルティーナ法国。ゼグナム解放戦線。

「ええっ!? ク、クレリテが……王女!? しかも向こう側の!?」

「お、驚きましたです……っ!」

 アルフォンスとクレリテの言葉に大いに驚くセシリアとカチュア。

 しかし、ラディウスは至って普通の表情のままだった。


「ラディは全く驚かない所を見ると、前から気づいていたのだわ?」

「いや、そんな事はないぞ。確証をもったのは今日だしな。ただ、ゼグナム王国の『隠密宰相』なんて異名を持っているテオドールさんが、『アルフォンス』をゼグナム解放戦線のリーダーだと言っていた時点で、『王位継承者』はアルフォンスではない他の誰かだと思っていたんでな。『驚き』よりも『納得』の感情の方が強いんだ」

 クレリテの問いかけにそう返すラディウス。

 

「あっ! ああぁぁーっ! そ、そうだよっ! ゼグナム解放戦線に宰相がいて……ときたら、そのリーダーは王位継承者の類である可能性が高いはずなのに、『アルフォンス』に関しては、王子とか王女とか正当な後継者とか、そういう風な呼び方はせずに、わざわざ『リーダー』って呼んでたっ! そこを隠す意図があったとしても、ちょっと不自然っ!」

「な、なるほどですです。つまり、そのゼグナム解放戦線のリーダーである『アルフォンス』が、王族ではない以上、他に王族の人間が存在している……という事になるわけですね! です!」

 ラディウスの話で、それぞれ理解したらしいセシリアとカチュアが、そんな事を言う。

 

「ああ、そういう事だ。まあ、クレリテが王女というのは少し想定外だったけどな。……クレリティリカと呼ぶべきであろうか?」

「クレリテのままで良いのだわ! それと、話し方も今まで通りでいいのだわ」

 クレリテがラディウスの疑問にそう返すと、

「まあ、今更かしこまった話し方とか出来ないしねぇ……」

 なんて事を言うセシリア。


「ところで、クレリテさんは最初から私たちが向こう側の世界とこちら側の世界を行き来出来る事を知っていたのですか? です」

「全然まったくこれっぽっちも知らなかったのだわ! 夢にも思っていなかったのだわ!」

 カチュアの問いかけに、胸を張って答えるクレリテ。


「胸を張って言うような事ではないと思うがな」

 そう言ってやれやれと首を横に振るアルフォンスと、

「ん? それじゃあ、クレリテはいつ知ったの?」

 と、問うセシリア。


「少し前に、メルティアーナに戻ってきた時にアルから聞かされたのだわ!」

「あ、随分最近なんだね。……っていうか、いつの間にかクレリテが、猊下をアルって呼んでて、口調も戻ってるね」

「今、この場では、私とアルは『ゼグナム解放戦線』の人間なのだわ! 教皇と配下ではないのだわ」

「……そ、そういうものなの?」

「そういうものなのだわ!」


 そんなセリシアとクレリテのやり取りを見ていたアルフォンスが、

「まあ、言葉遣いなんぞどうでもいい俺としては、王女に『であります』なんて言われるよりは、こっちの方が断然いいけどな。大体、『であります』って口調、クレリテには似合ってなさすぎだろ」

 なんて事を言う。

 

「あ、それは私もそう思う」

「ぐむむぅ……っ! ……わかったのだわっ! だったら別の言葉遣いを考えるのだわっ!」

「あ、そっちに行っちゃうんだ……」

 クレリテの発言に対し、セシリアが呆れ気味に、そう呟くように言う。


 ――そこで『別の言葉遣いを考える』という辺りが、クレリテらしいな……

 なんて事をラディウスも思ったが、敢えて口にはしなかった。


「それはともかく……なのだわっ! アル、さっさとアレを出すのだわ」

「へいへい。っと、その前にとりあえず突っ立ってないでそこに座ってくれ」

 アルフォンスはそう言いながら、ラディウスたちに近くのテーブルを指さす。


「あ、たしかに立ったまま話していたのだわ」

 その事に気づいたクレリテは、そんな事を言って真っ先にテーブルの椅子を引き、そして座った。


 ラディウスたちがそれに続く形で着席した所で、ベッド横に備え付けられているキャビネットから箱を取り出したアルフォンスが、それをテーブルまで持ってきた。


「黒塗りの……木箱? 装飾とかのない、随分とシンプルな見た目の木箱ですね」 

「フィルカーナ糖の袋を詰めた木箱よりも、少し小さい感じがしますです」

 セシリアとカチュアが木箱を見ながら、それぞれそんな感想を口にする。


 ――カチュアの感想が商人視点すぎて、なんだか面白いな。

 ……それにしてもフィルカーナ糖、か……。ある意味懐かしいな。


 ラディウスはカチュアの感想を聞き、そんな事を思った。

なにやら箱が出てきましたが……?

という所で、また次回! 次の更新は明後日、金曜日の予定です!

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