第4話 メルティーナ法国。円卓と教皇。
「中は割と普通な感じね」
天剣宮内を見回しながらそんな風に言うルーナ。
それに対し、ラディウスとカルティナが、
「ま、普通に生活している場所だからな。中まで奇抜な事になっていたら、生活しづらくてたまらないし、こんなもんだろう」
「うむ。もし、中まで空中に浮いているようなものばかりであったら、さすがに恐怖を感じていた所だ」
と、言葉を続けた。
「でも、ここって外からの侵入のしにくさはトップクラスだよね。空中回廊しかまともに来られる手段ないし」
「空でも飛べれば別だが、そんな事出来るわけねぇしな。……出来ねぇよな?」
レインズはセシリアの発言にそう返しつつ、いまいち自信が持てずにラディウスの方を見た。
「さすがに俺でも、空を飛ぶ魔法――ガジェットは作れないな。今の所は」
「今の所は……ですかです?」
ラディウスの最後の一言が気になり、レインズに代わってそう呟くように問うカチュア。
「一応、古の時代には空を飛ぶガジェットがあったらしくてな。もし、現存しているそれを手に入れる事が出来たら、作れるかも……? って思ってるんだ」
「あー、なるほど……そういう事ですかです」
――たしかに、『あの島』に外から来る人は、飛行艇を使っていましたです。
あの飛行艇の現存しているものがどこかに眠っているのなら……
カチュアがラディウスの言葉に納得しつつ、そんな事を考えていると、
「――ここが応接間になる。すまぬが、適当に座ってしばし待っていて欲しい」
と、大きなドアを開きながらアルディアスが告げてきた。
「これはまた見事な円卓だな……」
「これなら、どこに座っても特に問題はありませんね。教皇猊下がどこに座るのかという点を除いては」
レインズの感想に続く形で、そんな風に言って顎に手を当てるエレナ。
「ここで話をなされるのでしょうか?」
「だと思いますよ」
オードの疑問に対し、教皇を呼びに行ったアルディアスに代わり、そう答えるマクベイン。
そして、その場にいる面々と円卓を交互に見て、説明の言葉を紡ぐ。
「とりあえず……ラディウス殿とルーナ殿が横に並んで座れば、その反対側に座られるはずです。なので、そこを空けて置きさえすれば、後はどこに座られても特に問題はないでしょう」
「なるほど……。なら、とりあえず俺とルーナが座るか」
と言いつつ、ラディウスが手近な所に座ると、それに続いて、その右横にルーナが座った。
「じゃあ、私はここにするよっ」
なんて言いながら、ラディウスの左横に素早く座るセシリア。
「むむっ、じゃあ真反対に座るのだわ」
「真反対って教皇殿の真横なのではないか……? 私はこっちにしておこう」
「セシリア様とルーナ殿の真反対側はそうなりますな。……ふむ、私がここに座っておきましょうか」
クレリテ、カルティナ、マクベインがそんな事を言いながら、それぞれ席に座る。
マクベインが座ったのは、教皇の横になるであろう場所である。
そんな感じで順番に座っていき、全員が着席し終えた所で、タイミングを見計らったかのように、修道服の女性が入ってきてお茶を置いていく。
――教会の中枢みたいな場所だけあって、さすがにメイドが出てきたりはしないんだな。
なんて事を思いながらお茶を飲んでいると、
「急に呼び立てた上に、待たせてすまねぇな」
などという、妙にフランクな口調の声と共に、ファーの付いた青い外套が特徴的な、軍服に似た白い装束を身に纏った、レインズとさほど変わらないか、少し若いのではないかと思える青年が姿を現した。
――あれが……現教皇、か。
なるほど、たしかに随分と変わった人のようだな。
というわけで(?)、教皇の登場となりました。
服装が色々とアレなのはまあ……そういう人物なので……
そんな所で、また次回! 次の更新は……明後日、金曜日の予定です!




