第3話 メルティーナ法国。天剣宮。
「あれが天剣宮なのだわ」
手で空中回廊の先にあるそれを指し示しながら、そう言ってくるクレリテに対し、
「――これはまた……とんでもない建造物だな……」
と返しつつ、視線の先にある塔状の建造物――天剣宮をまじまじと見るラディウス。
「どうしてあんなに突き出した場所で、なおかつ下に何も支えがない宙ぶらりん状態なのに、落っこちないのかしら……」
ルーナがそんな風に呟くように言いながら、空中回廊の欄干に手を添え、天剣宮の下を覗き込む。
そこは湖になっており、その上に教皇庁の『中央聖塔』から突き出す形で――空中回路によってのみ結ばれる形で――存在している天剣宮を支えるものは、何もない。
まさに、ルーナの言う通り『宙ぶらりん』な建造物である。
「建物の基部の所に、浮遊魔法のガジェットが大量に埋め込まれているみたいだな」
「なんともまあ、無駄に魔導技術の詰め込まれた宮殿な事だな、まったく」
天剣宮を解析しつつ言うラディウスに、呆れた声でそう返すカルティナ。
「でも、面白いのはたしかではありますです」
そんな風に言うカチュアに、
「面白いけど、あまり住みたくはないな……」
「こう言ってはなんですが……同感です」
なんて言葉を続けるレインズとオード。
それに対し、アルディアスまでもが、腕を組みながら同意の言葉を口にする。
「まあ……個人的にも、あまり長居したくない場所ではある……」
「一体、どんな理由であんな風に作ったんだろうね……?」
セシリアがもっともな疑問をクレリテに投げかけると、クレリテは少し考えた後、お手上げだと言わんばかりに両手を広げ、
「うーん……さっぱりなのだわ。マクベイン、知っていたりするのだわ?」
と、首を横に振って答えると、そのままマクベインに質問をパスした。
「……そうですな……。どういう理由であれが作られたのかについては、私にも分かりかねますが……記録によると、あそこは元々あの場所に『浮いた状態で古の時代から存在』しており、この空中回廊の方が後から作られたようです」
マクベインが顎に手を当てながら、そんな風に返す。
「それって、天剣宮がまず存在して、その後に中央聖塔の方が作られ、そこから更にこの空中回廊を伸ばした……と、そういう事なのだわ?」
「そういう事になりますね」
頷いてそうクレリテの質問に答えるマクベイン。
「なるほど……あれは最初から浮遊する建造物として存在していたのですか……。彼の古代文明が最も栄えていた頃に、結構な数の浮遊する建造物が作られたようですので、あれもまた、そのひとつなのでしょうが……そもそも、どうして浮遊する建造物がそんなに数多く作られたのかは分かっていないんですよね……」
そんな事を説明するような口調で言うエレナ。
そして、その話を聞いていたラディウスはというと……
――それって、特にこれといった理由も意図もなく作られていた可能性もあるよなぁ……
地球でも、単にデザイン的な部分を重視して作られた、不可思議な形状の建造物とか割とあったし……
などという、身も蓋もない可能性について考えていたりするのだった――
まあ、ファンタジー色の強い建造物とも言えますね。
なんというか……今回の話は、入口で足踏みしてしまったような感じになりましたが、次の話は、ちゃんと天剣宮の中での話になります!
そして、その次の更新ですが……明後日、水曜日を予定しています!(多分、大丈夫です……)




