第2話 メルティーナ法国。枢機卿と教皇。
「――枢機卿猊下、まさか貴方が法国におられるとは、思いもしませんでしたよ」
ラディウスがそう口にした通り、ラディウスたちに言葉を投げかけてきたのは、枢機卿――アルディアスであった。
「さすがに依頼した人間が出迎えぬわけにはいくまい? ……ああそれと、法国内においては、枢機卿猊下などという堅苦しい呼び方はいらぬ。というより……猊下と呼ぶのは、教皇猊下だけにしておく方が良いとも言える。なので、我の事は普通に名前で呼んでくれれば、それで構わない」
ラディウスに対し、そんな風に返してくるアルディアス。
「……そういうものなのですか? ……では、アルディアスさんとお呼びいたします」
「ああ、そうしてくれ。……まあもっとも、ラディウス殿なら少なくとも王国領内であれば、我の事を名前で呼んでも、誰も文句は言わぬだろうけどね」
アルディアスが腕を組みながらそう言うと、
「同意するのだわ」
と、クレリテ。
セシリアとマクベインも無言でそれに頷く。
「……それはさておき、アルディアス殿が出迎えに来られたという事はもしや?」
と、問うマクベイン。
「うむ、大封印の間への立ち入り許可が下りた。……というより、教皇猊下が強引に下ろしたと言うべきだね」
「なんともまあ……」
「しかも、それだけではなく……ラディウス殿たちに直接、今日今すぐにお会いになりたいと仰ったのだよ」
ため息交じりにやれやれと首を振るアルディアス。
「……今すぐ……ですか。あるいみ意味、あの御仁らしいというべきでしょうかね……」
――うーん……どうやら今代の教皇というのは、大分破天荒というか、変わった人物のようだな。
……しかし、到着早々俺達に会いたいとは想定外だ。何か厄介な事にならなければ良いのだが……
アルディアスとマクベインの会話を聞きながらそんな事を思うラディウス。
「――とまあ……そんなこんなで来て早々ですまぬのだが、これから教皇庁中枢――『天剣宮』へと案内しようと思っている。……皆、問題ないだろうか?」
そう問いかけてくるアルディアスに、
「えっと……このような格好で教皇庁へと足を踏み入れ、更に謁見などしても良い物なのでしょうか……?」
と、問いかけるエレナ。
「たしかに、少なくとも正装の類からは程遠い格好ではある」
そんな風に言いつつ、自身の服装に視線を向けるカルティナ。
「ああ、正規の謁見ではないゆえ、そこら辺は気にせずとも問題はない……というより、服装で言ったら教皇猊下もまあ……正装からは程遠いのでね……」
なんて事を言って再びため息をつくアルディアス。
それを見ていたルーナが顎に手を当てながら思考を巡らせる。
――う、うーん……話には聞いていたけど、大分変わった人みたいだね……
そういう人程厄介なんだよねぇ……
私が諜報員だってのバレたりしないよう注意しないと……
割と早めの展開になっていますが、この先もしばらくはこんな感じで、割とガンガン突き進んでいく予定です。
といった所でまた次回! 次の更新は明後日、月曜日を予定しています!




