第2話 逃避行。逃げる者、追う者、見つめる者。
「連中、まだ俺たちが城壁に登った事には気付いてねぇようだぜ」
「まー、さすがにこんな逃げ場のない場所に来るとは思っていないんじゃないかなぁ」
マリス・ディテクターを使いながら告げるレインズに対し、そう返すセシリア。
「この高さから飛び降りたら普通は死にますからね」
「なんというか、城壁の周囲を丁寧に舗装してクッション性を皆無にしている辺りに、殺意を感じるのだわ。梯子とかで登ってきた敵を蹴落としたら、抜群の効果を発揮するのだわ」
「そうですね。そこに限らず、防衛戦でいかに敵兵を減らすかという工夫はあちこちにされていますからね。この都市は」
オード、クレリテ、エレナが城壁から下を見ながらそんな事を言う。
「ま、そんな都市ともこれでオサラバ、という奴だね」
というカルティナの言葉にラディウスが頷き、告げる。
「ああ。それじゃあ、行くぞ」
「よーし、飛び降りるよっ! そりゃー!」
という掛け声と共に城壁から飛び降りるセシリア。
それに続く形で、他の面々も一斉に城壁から都市の外へ向かって飛び降りる。
そして、その瞬間、
「――レビテーション!」
というカチュアの声が響き、レビテーションの魔法が発動。
一瞬、ふわっと浮かび上がるような感覚と共に、やや落下速度が緩やかになる。
そして、そのまま更に少し落下した所で、ラディウスがグラビティコントロールを発動すると、一気に落下速度が緩やかになった。
「レビテーションやグラビティコントロールを使うと分かっていても、飛び降りた直後はちょっと怖かったわね……」
「ええ、そうですね……」
なんて事を言うルーナとエレナ。
「む……。連中、城壁に登ってきやがったぞ」
「魔法の発動を感知されたか? 速度的にはギリギリ見つかるな……。攻撃される可能性は高い……か。――みんな! 着地と同時に前方に見える林の方へ走るぞ!」
レインズの言葉に、ラディウスは自身もマリス・ディテクターを使い、状況を把握すると、皆にそう告げた。
そして、地面に足がついたその直後、真上から火球が降ってくる。
だが、既にストレージから聖剣を取り出していたセシリアが、
「せいやぁっ!」
と、聖剣を振るってそれを一刀両断。
「いきなり攻撃してくるとはなっ!」
「判断としては正しいですけどね……!」
レインズとエレナがそんな事を言いつつ走る。
そこへ雷撃と漆黒の魔弾が襲う。
が、今度はラディウスが走りながら展開した魔法障壁がそれを防いだ。
「幸い、威力がそこまで高くない魔法なのが救いね」
と言いつつ、ルーナもまた同じ魔法を発動しつつ、走る。
その後も頭上から数多の魔法が降り注ぐが、ラディウスとルーナの展開した魔法障壁に防がれ、セシリアの聖剣に切り裂かれ……と、そのどれもがそこまでの威力がある魔法ではなかった事もあり、何一つ直撃する事なく、ラディウスたちは難なくカレンフォート市からの離脱に成功する。
……しかし、その後方――城壁の上で、ラディウスたちの動きを眺めながら、
「――こんな所か。これでこちらの追跡が偽装であるとは思うまい」
などと呟く人物がいた事に、ラディウスたちは誰ひとりとして気付いていなかった。
前節の最後に言っていた通り……という話ですね。
とまあそんなこんなで、また次回!
次の更新は明後日、土曜日を予定しています!




