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第3話 ビブリオ・マギアス。地の底で交わされし話。

 水中に妖魔を送り出したのを確認したジェイクスが、両手に5本ずつ、計10本の短剣を持つと、 

「もし透明になってんならよぉ、こうしてみりゃあ分かるよなぁっ!」

 と、そんな事を言いながらそれを一斉に投擲(とうてき)

 

 すると、どういうわけか投擲された短剣は左右にウネウネと蛇行しながら、水路上を飛翔し始める。

 

「相変わらずの曲芸。面白い」

「クキャキャ、ありがとよ」

「無論、冗談」

「おい、冗談ってなんだよ!?」


 そんな会話をしている間にも短剣は蛇行しつつの飛翔を続け、何にも命中する事なく、そのまま彼方へと消えていった。


「おっと、どうやら水中にいるっぽいぜぇ?」

 と、肩をすくめてみせるジェイクス。


「捜索中……」

 エリーシアがそう返した所で、妖魔の1体が水中から顔を見せる。

 その手にはレインズに渡した腕輪が握られていた。

 

「はあぁ!? 腕輪だけだとぉ!?」

 驚愕するジェイクスに、

「妖魔、魔法反応を感知。魔法での偽装の上、本隊、別方向に逃走の可能性、大」

 と、冷静に告げるエリーシア。

 ここでいう『本隊』とは、もちろんラディウスたちの事である。

 

 それで全てを察したジェイクスが、

「くそぉっ! あの男――ラディウスの仕業かぁぁっ! くそっくそぉぉっ! たしかにあいつならこのくらいやってのけてもおかしくねぇっ! そう俺自身が考えていながら、この可能性まで考えきれねぇとか、俺のばかやろうがぁぁっ!」

 などという、ラディウスと自身に対する怒りの叫びを発しつつ、その拳で自身を思い切り殴りつけるのだった。

 

                    ◆

 

 その頃――

 

「……腕輪の仕掛けに気づき、欺瞞(ぎまん)魔法で(あざむ)きつつ解除……か。いくらあの男――ラディウスがいるとはいえ、そこまでの事が出来るとは到底思えぬ……。……聖女の力……いや、ルーナという名の、ラディウスの一番弟子的存在が補佐した……か?」

 地下遺跡の一角に、そんな声が響く。

 そして、その声は本の形状をしたガジェット――通信魔法のガジェットからのものだった。


「――恐らくは。この地域において強い発言権を持つ者のひとりであるマークス……()の商人にヴィンスレイド卿が渡した疑似呪物、あれを破ったのが()の娘である事は把握済み故」

 そうオルディマが返すと、しばしの沈黙の後、

「その娘、本来の歴史であれば、グランベイルでの大規模な『降魔実験』によって、魔人――その失敗作と化し、死せるはずの者……。カチュアの歴史改変による影響は、想像以上のものといえる……な」

 という声が通信魔法のガジェットから発せられる。


「然り。――圧倒的な知識と技術を有するラディウスの歩みを変えた事により、歴史の流れは、最早完全に異なった物と化している。修正は不可能に等しい。彼の歴史は――彼の世界は、既に辿り着かぬ世界となりつつある」

「……それを吉とするか凶とするかは判断の難しい所ではあるが……なんにせよ、ラディウスが『特異点』であったという事を、我らよりも先に、カチュアに気付かれたのが大きな誤算……か。何度も過去へと戻れる者を、見た目の年齢で判断したのが失敗であった……な。聖女の聖剣の共鳴により、最早カチュアの抹殺は不可能……」

 実際には聖剣は無関係なのだが、あの場の状況からすると、そう判断してしまうのもわからなくもない話であった。


「……カチュアは、我が秘術――『漆黒の闇影(あんえい)』による永久封印を想定している」

「ふむ……。封印は有用と考える。……が、汝が言った通り、歴史の流れは最早完全に変わった。それだけでは不十分と言えよう。既にこちらも本来の歴史とは異なる動きを取らざるを得ない状況ゆえに……な。――カチュアの動きをしばし追え。次の手を知り、その手の先を潰す」

「――得心、および承知。……欺瞞には欺瞞を。現在の捕縛および追跡を偽装とし、カチュアの行動を追跡する」


 ……と、そんな会話が、地下遺跡で通信魔法のガジェットを介して行われていた。

 もしカチュアが聞いていたら、あまりの勘違いぶりに困惑し、大混乱に陥ってしまいそうな話である。

といった所で、この節は終わりです。

次の話からラディウスたちの視点に戻ります!

更新は……明後日、火曜日の予定です!


追記

いくつかルビを追加しました。

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