表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

231/636

第14話 呪物と常駐魔法。腕輪と封呪布。

 解呪を始めて約2時間ほどが経過した所で、

「――解呪完了よ。念の為、猛毒魔法の起動に使われていたAWIコンバーターと、SFBプロセッサを私の方で用意した物とすり替えて、猛毒魔法の術式そのものを削除しておいたわ」

 と、完了を告げるルーナ。

 

「お、そこまでやったのか。さすがはルーナだな。もう俺とあんまり変わらないんじゃないか?」

 ラディウスにそう言われたルーナが、小さくガッツポーズをして、心の中で「やった!」と歓喜する。

 しかし、口から出るのはそんな歓喜ではなく、

「そう言ってくれるのはとても嬉しいけど、まだまだ足りない知識はあるし、スピードに至っては足元にも及んでいない気しかしないわ」

 という謙遜めいた言葉だった。

 もっとも、顔が盛大にニヤけており、嬉しいのは誰から見ても一目瞭然だったが。


「それで……その腕輪はどうするつもりなのだ?」

 カルティナがレインズの腕とラディウスたちを交互に見て問う。


「えっと……これ、外しちゃって大丈夫かしら?」

 ルーナは問いにどう答えて良いか迷ったあと、ラディウスの方を見てそう尋ねる。


「セシリアが行った情報操作のログをもとにオートプロセスコネクタを用意した。ルーナ、これをAWIコンバーターの霊性魔導回路に挟み込んでくれ」

「良く分からないけど、挟み込めばいいのね。わかったわ」

 ルーナはラディウスから受け取った紋様の描かれた青い球体を、術式を構成する魔導回路上の言われた場所へと設置する。


「……よし、正常に動作しているな。――セシリア、もういいぞ」

 ラディウスはセシリアにそう告げると、セシリアは、

「はふぅ……。情報が次々と流れてきて、誤魔化し続けるのが大変だったよ……」

 なんて事を言って脱力して見せる。


「ああ、よくやった。――お陰でこの腕輪を陽動に使える」

「陽動……。なるほど、詳細は分からないけどセシリアがやった行為を自動化させて、そっちにレインズさんがいるように見せかけるってわけね」

「そういう事だ。魔法の波動を伝って送られてくる命令には、レインズに対して影響がある物だけじゃなく、純粋に腕輪自体に情報収集させる物もあったからな。そこを弄って嘘情報を送り返す状態にした上で、これを地下の水路に――反対方向へ流す事で、そっちに連中の目を引きつけられるってわけだ」

 ラディウスはそう説明しつつレインズから腕輪を外すと、そのまま銀色の布で包み込んだ。


「納得したわ、たしかにそれは有効な手段ね。――あ、そうそう……前から気になっていたんだけど、その布ってなんなの?」

 ルーナが、ラディウスの持つ銀色の布を指さしながら問う。


「ん? ルーナ、知らなかったのだわ? あれは、封呪布なのだわ」

 ラディウスの代わりに横からそう言って来るクレリテに対し、首を傾げるルーナ。

「封呪布?」


「呪いを防ぐ事が出来る、特殊な祝福の施された銀が織り込まれている物なのだわ。呪われている可能性のあるものに触れる時とかは、あれで作られた手袋を使うのだわ」

 というクレリテの説明を聞き、ルーナは顎に手を当てて思案した後、

「呪いを防ぐ……銀? えっと……魔法の伝達を阻害する合金を織り込む事で、布の所で魔法の効果がストップして、その先――手で持っている人に魔法が発揮されなくなるって所かしら?」

 と、そんな風に言った。


「ああ、仕組み的にはそういう感じだな」

 ルーナに対し、ラディウスはそう答えて頷くも、クレリテの方は、

「……そういう言い回しをされると、一気に神秘性がなくなるのだわ……」

 なんて事を呆れ気味い言った。

 そして、そんなクレリテに対し、

「まあ、聖剣もただのセキュリティロックがかかっているだけの剣型ガジェットだし、そこは気にしてもしょうがないよ」

 と、そんな風に言うセシリア。

 

「こっちもこっちで、セキュリティロックとか神秘性の欠片もない名称になったのだわ……。それ、聖女が言っちゃ駄目なセリフな気がするのだわ」

 クレリテが、やれやれといわんばかりに首を横に振ってみせる。

 

 ラディウスたちのそんなやり取りを離れて眺めていたオードとエレナが、

「なんというか……神秘的な物や呪物などへの見方が大きく変わってしまいますね……」

「ええ、本当にその通りですね……。私の中にあった常識が、次々と崩れていっていますよ……」

 と、そんな事を呟くように言い、そしてそれに同意するように、カルティナとカチュアが静かに頷いてみせるのだった。

今回も若干長めになりました……

次回の更新は明後日、月曜日の予定です!


※オマケ(単なる裏設定のコーナー)

AWIコンバーター:正式名称は、エーテリアルウェーブ・インストラクションコンバーター

魔法の波動によって飛んでくる『命令』を術式として処理出来る形に変換する機構です。


SFBプロセッサ:正式名称は、ソーサリー・ファストブートプロセッサ

組み込まれた魔法(の術式)を、高速で発動させる為の特殊な処理を行う機構です。


つまり、この2つの組み合わせによって、腕輪が外された時に、瞬時に魔法が発動するという罠のような処理を実現させている、という感じです。


このAWIコンバーターに飛んでくる『命令』には『情報収集』も含まれており、この情報収集に対して、辻褄の合う嘘を返す……というのがセシリアのやった事です。

そして、その対応傾向を分析して集積した術式で、セシリアのやった事を自動的に行わせるのが、オートプロセスコネクタです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ