第13話 呪物と常駐魔法。腕輪の魔法と対処。
「え? え? レ、レインズさんに何をしたんですか?」
エレナがレインズの様子に動揺しつつ、不安そうにラディウスたちに問いかける。
「驚かせてしまってすまない。実は――」
ラディウスはそう切り出し、レインズの腕輪が呪物である事を告げる。
「……な、なるほど、そうだったのですか……。ビブリオ・マギアスは呪物まで生み出せるという事なんですね……」
ラディウスの説明に納得したエレナがそう言った所で、説明の間に解析を終えていたルーナが、
「で、その問題の呪物――腕輪だけど、位置情報を取得して波動に乗せてどこかに送る常駐魔法と……思考誘導の常駐魔法……それから、無理に外すと周囲に猛毒を撒き散らすトリガータイプの魔法が組み込まれているみたいよ。――これはもうなんというか、最早トラップね」
なんて事を、ため息交じりに言って肩をすくめた。
「まったくもってその通りだな……。……これをどうにかするとなると……欺瞞魔法で向こうとのやりとりを誤魔化しつつ、解呪――常駐魔法の術式を無害化するか削除するしかないな」
「そうなるわね。……これは、私とラディで手分けするのが最良……かしらね?」
「そうだな……。魔法を波動として送受信する仕組みとなると……欺瞞魔法は俺が制御した方が良さそうだ。ルーナ、解呪を頼む。クレリテ、サポートしてやってくれ」
「ええ、わかったわ。……解呪なんてあの日以来だけど、やり方は完璧に覚えたし、技術だってあの時とは段違い。やって出来ないはずはないわ」
ラディウスの言葉に頷き、そう自信ありげに答えるルーナ。
しかし、その手足をよくよく見てみると、若干震えているのが分かる。
マークスの呪物よりも難易度が高い以上、そこは仕方がない所であろう。
「ああ。今のルーナなら余裕だ」
ラディウスはそう告げると、
「私が全力で手伝うのだわ! なんでも言うのだわ!」
と、クレリテもまた胸を張ってルーナに告げる。
「……そうね。じゃあ、早速お願いするわ――」
そうして解呪を始めたルーナを横目に、ラディウスは送受信による位置情報取得や思考誘導を騙すための欺瞞魔法を展開しつつ、セシリアに問う。
「――セシリア、偽情報を使って混乱させる方法は?」
「ん? もちろん会得しているけど?」
「じゃあ、それを使って欲しい所があるから俺を手伝ってくれ。ちょっとこっちに」
「良く分からないけど、もちろん何でも手伝うよ」
そう答えながらセシリアがラディウスの方へと歩み寄る。
すると、セシリアの視界に突然誰かの発言と思しき言葉を文字にしたものや、立体的な地図らしきものが飛び込んでくる。
「うわっ、なにこれっ! なんだか凄い!」
と、驚愕半分興奮半分と言った様子で、それらに触れてみるセシリア。
「何もありませんですよ?」
「ふへ? あれ? ここに文字と随分と立体的な地図が――」
不思議そうなカチュアの言葉にそんな風に返した所で、
「それは俺とセシリアにしか視えていないぞ。そういう魔法だからな」
と告げるセシリア。
「あ、そうなんだ。――そういう事らしいよ」
「納得しましたです! セシリアさんが挙動不審な動きをしているように見えてしまったもので……すいませんです……」
「う、うん、まあ、別にいいけど……」
カチュアの言葉に、そんなに挙動不審に見えたのだろうかと、セシリアは少し凹みながらそう返す。
そして、胸に手を当てて一呼吸置き、気を取り直してからラディウスの方を見て問う。
「それで……これでどうすればいいの?」
「飛んでくる指示に対して、どう対処するかを考えて欲しいんだ。適当に返すとバレるからな。上手くバレないような流れで対処してくれ」
「なるほど……レインズさんが『何かしているように』見せかければいいんだね。任せて! こういう情報操作ならしっかり学んでるからなんとかなるよ!」
ラディウスの説明を聞いたセシリアが、自分に任せろと言わんばかりに胸を叩いてみせる。
「なんか、あっちはあっちで盛り上がっているのだわ」
「ぐむむ……。ただでさえセシリアは数歩リード状態なのに、ここで更にリードされたらシャレにならないわね……。こっちもバッチリやってむしろ詰めてやるわよ!」
「よ、良くわからないけど、ルーナの凄まじいまでの気迫だけは伝わってきたのだわ……」
ルーナとクレリテも、そんな事を言いながら解呪を開始する。
ルーナの手足には、既に震えはなかった。
今回はいつもよりも少しばかり長くなりました。
ここよりも手前で区切ってしまうと、どうにも微妙だったもので……
といった所でまた次回! 次の更新は明後日、土曜日を予定しています!




