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第3話 魔工士は調べる。そして告げる。

「む、無効化……ですか?」

 ルーナの横で説明を聞いていたマリエルが、ラディウスにそう問いかける。

 

 ラディウスは落ち着きを取り戻したらしいルーナから手を離すと、鞄から手袋を取り出しながら、マリエルの方を見て答える。

「はい、無効化です。ガジェットに組み込まれた魔法――正確に言うなら、ガジェット内に刻まれている魔術式と、それを発動させるための魔導回路基板であれば、その構成、構造さえ正しく把握すれば、無効化や書き換えは可能ですし」


「えっと……正しく把握する……? どうやって?」

 というもっともな疑問を、今度はルーナの方が投げかけてくる。

 

 ラディウスは鞄から取り出した手袋を手に嵌め、

「こうすればいいだけだ。――マジックストラクチャー・オープン!」

 と、答えを示しながらマークスの持つ腕輪に視線を向け、指をパチンと鳴らした。

 

 ……ちなみに、別に指を鳴らす必要はない。これは単なるラディウスのクセだ。

 

 ラディウスの目の前に、浮遊する青い球体が出現。

 その球体の中には、機械の中の電気配線を思わせるような物が、複雑に入り組んでいるのが見える。

 

「こ、これは一体……!? あ、いや、まてよ……? たしか、この間、伯爵様にもこれに近い物を見せてもらったような……。むむ……?」

「な、なんだか凄いわね……。というか、さっきから驚きっぱなしだわ……」

 マークスとマリエルが驚きの表情でそんな風に言う。

 マークスの方は途中で何かを思い当たる事があったのか、こめかみに指を当てて考え始めた。

 

「え? ふたりにも見えているの? これ」

「まあ、この状態にすれば誰でも魔術式が見えるようになるからな。もっとも、これに触れられるのは、この手袋を付けた人間だけだが」

 ラディウスはルーナの疑問にそう答えると、球体の中を観察し始める。

 

「ふむふむ……問題の魔法を構成するのは……この術式だな。で、魔導回路基板がこっちか。基板上にあるのは生命力を変換するLMCに、発動した魔法を常駐させる為のRCD……。それから所有者を固定しているのは……このSEMを利用している感じか……。そして――」

 そんな事をブツブツと呟きながら、電気配線の思わせるような物や、それが繋がれた基板のような物を触ったり眺めたりしていくラディウス。

 

「う、うーん……。ラディが何を言ってるのかさっぱりわからないわ……。お母さんわかる?」

「いいえ、私も魔法自体の知識はそれなりにあるけど、構成がどうこう言われたらさっぱりわからないわね。今までガジェットや魔法の構成まで詳しく知る機会なんてなかったもの……」

「まあ、たしかにそうだよねぇ……。それでこれは……なんなの?」


 マリエルに、自分にもわからないと言われたルーナは、ある意味それに納得し、改めてラディウスに向かって問いかける。

 問われたラディウスが説明しようとした所で、マークスが「あ」という声を発した。

 

「ん? マークスおじさん、どうかしたの?」

 声に反応するようにルーナがマークスの方を見て問う。


「……ああ、伯爵様が説明していたのを思い出したんだよ。これは古代文明で使われていたガジェットの作成や調整を行うための技術で、数年前に再現に成功したばかりの物だ。なんでも南部の国境に近い村に住む魔法研究者が、偶然見つけた方法が再現のきっかけになったそうだ」

 マークスのその言葉を聞いたラディウスは思う。

 

 ――その魔法研究者ってのは、実は俺なんだが……まあ、敢えて言うまい。

 説明の手間も省けたことだし、さっさと調べてしまうとしよう。

 

 というわけで、マークスたちの会話を聞き流しつつ球体の中を細かく調べていくラディウス。

 そして、数分ほどかけて調べ終えると、

「おおよそ構成は理解した」

 と、そう呟いた。

 

「そ、それでどんな感じなの?」

「大した構造じゃないな、これ」

「そ、そうなの? なら、どうにか出来そうな感じ?」

「ああ、これなら余裕で――」

 

 余裕で可能だと言いかけた所で、ラディウスは思う。

 ――まて、ここで俺がやるのが手っ取り早いんだが、それだとマークスさんのロック――呪物を外したのが俺だと周囲に伝わってしまう気がする。

 あまりやりすぎるのはまずいよなぁ……。マークスさんが伯爵がどうとか言っていたから、伯爵にはこの知識や技術があるようだし……

 もしこれが複雑な構造だったのなら、そんな事気にしてはいられないし、俺がやるんだが……この程度なら別に俺じゃなくても出来るはずだ。そう例えば……


「ど、どうかしたの? も、もしかして、やっぱり難しい……とか?」

 考え込んだままのラディウスに、恐る恐るといった感じで問いかけるルーナ。


「――いや、初歩中の初歩といった感じだな。……あ、そうだ。せっかくだからルーナがやってみるか?」

 さも、ふと思いついたかのように言うラディウス。

 無論、口にする前から既にルーナにやらせようと考えていたわけだが。

 

 言われたルーナは一瞬何を言われたのか理解が出来ず、しばし呆然とした後、

「……えっ? えっ!? えええええええええーっ!?」

 と、驚愕の叫びを室内に響かせた――

割とどうでもいいですが、途中で出てきたLMC、RCD、SEMは以下の通りです。

LMC=生命魔力コンバーター:所有者の生命力を、魔力へと変換する為の物

RCD=常駐制御デバイス:魔法の常駐し続ける様、魔力消費を制御する為の物

SEM=魔導拡張メモリ:拡張した魔術式を自動調整し、動作を安定させる為の物



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