第11話 呪物と常駐魔法。押し寄せる者ども。
モーテルの周囲は森に囲まれており、探知魔法以外では位置を把握し難い状況であったが、メルメメルアにはあまり関係なかった。
メルメメルアの探知魔法もマリス・ディテクター程ではないにせよ、それなりに高性能だからだ。
「ふっとばすのです!」
メルメメルアが、ラディウスから以前譲り受けたクロスボウ型のガジェットを構え……射程に入ったエリミネーターを穿つ。穿つ。穿つ。
しかし、流石に数が多く木々を盾とされる事もあり、あまり倒せない。
また、木々の多さ故に、炎を使うわけにもいかないというのもある。
敵を倒す事は出来るだろうが、それ以上に近くにある集落などの無関係な人を巻き込む事になりかねない。
一応、強力な消火用魔法――ガジェットは存在している。しかし……
――森林が近くにある以上、消火用魔法のガジェットは配置されていて然るべきではあるですが、絶対とは言えないのが困りもので、なかなか厄介なのです……
メルメメルアはそんな風に考えつつ、クロスボウ型ガジェットで迎撃を続けていると、
「はいはいっと! こういう時はこれの出番だよっ! 虚空より暗雲割きて降り注ぎしは、金色なる千の月輪! ――クリーヴィング・クラウズ!」
などという声と共に、以前、魔軍を薙ぎ倒した時に使った魔法を再び使い、一気に薙ぎ払うセシリア。
破壊力の高い魔法は森を吹き飛ばしてしまう為、この場では使えないが、この魔法なら、木々の隙間を縫って上や横から襲いかかる為、非常に有用だった。
木々に阻まれ、逆に逃げ場を失したエリミネーターたちが、次々に引き裂かれ、倒れていく。
「む、無茶苦茶な威力なのです……」
やや呆れ気味に言うメルメメルアに追いついてきたカチュアが告げる。
「同じ物を持ってきましたです!」
カチュアからガジェットを受け取ったメルメメルアが、組み込まれた魔法を認識し、
「……凄まじい魔法ばかりなのです……」
と驚きと呆れの入り混じった声を発した。
そして「さすがはラディウスさんなのです」という称賛の言葉を続けつつ、即座に呪文を唱える。いや、言い放つ。
「滅びを齎せし冥き陰、咆哮となりて我が道を拓かん――クワイタス・ディフュージョンッ!」
それはルーナが魔軍を薙ぎ払うのに使った魔法だ。
地面に手を付いたメルメメルアのその場所から、赤黒い衝撃波が地を這うように放たれ、それが無数に枝分かれするように、そして木々の合間を縫うように、広がり、触れた者を飲み込み、滅していく。
そこから更にセシリアとメルメメルアは連続して次の魔法を放ち、あっさりとエリミネーターの1/4が消え去った。
それを確認したメルメメルアが、
「この威力なら時間稼ぎどころか、殲滅も出来そうな気がするです」
と、そんな事を呟くように言う。
だが、それに対してカチュアは首を横に振ってみせる。
「いえ……更に増えていますです。マリスディテクターを使ってみてくださいです」
「マリス・ディテクター……たしかにあるですね」
カチュアに言われたメルメメルアがそう返しながら、マリス・ディテクターを使う。
すると、モーテルの近くに接近してきていたエリミネーターのその後方に、新たなエリミネーターの存在が増えていた。
「……50……違うですね……51……53……58……65……どんどん増えているのです。探知範囲内に次々に入り込んで来ている……です」
「はいです。一体どれだけの数がいるのやら……という感じですです」
そんな風にため息まじりにメルメメルアに告げるカチュアだったが、その直後、視界が唐突に切り替わった――
というわけで、思ったよりも迎撃の描写が長くなってしまいましたが、なんとか向こう側へ戻る所まで収めました……
そんな所でまた次回! 更新は明後日、火曜日を予定しています!




