第10話 呪物と常駐魔法。古代の書と襲来。
ラディウスがさてどうしたものかと思っていると、
「……あれ? 古代の書物……? 加工素材……?」
と、セシリアが何やら呟き始める。
「ん? どうかしたのか?」
ラディウスがセシリアの呟きに首を傾げる。
「あ、うん、古代の加工素材とかを記していた物、聖堂の書庫で見かけた気がするなぁ……って思ってね。ほら、一応そのふたつの素材、調べてみるって言ったじゃない?」
「ああ、そういえば言ってたな」
「うん、それで聖堂の書庫でそういうのが書いてあるのがないかと思って見てみたんだけど、その時に古の時代――ガジェットが一般的に大量生産されていた時代について記された書物――の写本があって、その中のひとつがそういった物を扱っていたような気がする……」
「……古代の書物なら、歴史が分岐する前の代物だ。俺たちの世界側に同一の物があってもおかしくはない、か……」
セシリアの説明にそんな事を言うラディウス。
そしてそのまま思案しながら、
「……聖堂……メルティーナ法国……ある意味、手としては妥当……か」
などと呟く。
「なにが妥当なんですかです?」
というカチュアの問いにラディウスが答えようとした所で、
「――ちょっ! ラ、ラディ! 大変! マリス・ディテクターに反応あり! だよ!」
と、セシリアが慌てたようにラディウスに告げる。
ラディウスは作業の手を止め、マリス・ディテクターを発動。
すると、夥しい数のエリミネーター反応が頭に浮かんでくる。
認識出来る範囲だけで200はいた。
「おいおいマジかよ……。聖木の館にはどんだけの人間がいるんだよ……。『館』なんて名乗っている拠点に存在するような規模じゃねぇだろ、これ」
「あ、うん、たしかにそうだけど、問題はそこじゃないような……って! それよりも、これだともう逃げるしかなくないっ!?」
「……おっと、あまりの驚きにセシリアにツッコミをさせてしまうとは、なんたる不覚」
「どういう事なの、それ……」
ラディウスにジトッとした目を向けるセシリア。
「随分と余裕ですねです」
「まあ、200はたしかに多いが、魔軍事変の時と比べれば大した事ないし、どうにか出来る範囲だからな。……ただ、これで全部とは思えないから、基本は逃げる方向性だが」
ラディウスはカチュアに対してそう答えると、髪を掻きながら、
「……本当は逃げる前にあの人形――魂の方を先にどうにかしたかったんだが、ちょっと厳しいな。一旦、そっちは後回しにして撃破して突破するとしよう」
と告げた。
しかしそれに対し、メルメメルアはドアノブに手をかけてラディウスたちの進路を塞ぐようにしながら、
「ラディウスさんは、グラビティコントロールのガジェットを作って向こうに戻るです! ……そして、もうひとつのガジェット――その魂をどうにかする物を作って、またこっちに来るです! 私が牽制してくるのです!」
と、そんな風に一気に捲し立てると、ドアを勢いよく開け、部屋の外へと飛び出していく。
「ちょっ! メルちゃん!?」
セシリアが慌てて追いかけていく。
「あ、おい、ちょっと待った! ……聞こえてないか」
「何かあるんですかです?」
カチュアがそう問いかけると、ラディウスは2つのガジェットを、カチュアに手渡しながら説明する。
「ああすまない、このガジェットの片方をメルに渡してくれ。レインズやカルティナに渡したのと同等以上の魔法が使える。もうひとつはカチュア用だ。本当は俺が直接渡しに行きたいんだが、俺はメルの言うとおり、グラビティコントロールのガジェットを作ってしまうつもりだ。向こうへ戻ったらレインズの呪物――まだそうと決まったわけじゃないが、恐らくそうだろう――を、どうにかしないと駄目だろうからな」
「了解しましたですっ! ラディウスさん、向こうへ戻るタイミングはお任せしますです!」
ラディウスからガジェットを受け取ったカチュアは、急いでメルメメルアとセシリアを追うべく走り出した。
思ったよりもこちら側の話が長くなってしまっていますが、次で向こう側に戻ると思います。多分……
といった所で、また次回! 次の更新は明後日、日曜日の予定です!




