第9話 呪物と常駐魔法。レメトン氷晶とエルメの紅焔石。
「……インプラントと言えば、ディーゲルの娘をあの人形に移し、縛り付けている術式だが……アレ、インプラントとインストールの複合みたいな術式だったな。まあ、俺もインプラントやインストールについては詳しくないから、あくまでも構成からの推測……って所だが」
そう呟くように言い、更に思考を巡らせるラディウス。
――俺がこの時代に遡ってくる際に使ったガジェット。
アレを作る時に構築した術式に近い物や、ルティカたちヴィンスレイドに使われていた術式、それからあの遺跡で見かけたガジェットを埋め込まれていた魔物……
それらを組み合わせたようなものだったからな……。おそらくそう的外れという物ではないはずだ。
「え? アレをもう解析し終えたのです? ……って、ああ……向こう側の世界で解析したですね?」
「そういう事だ」
「じゃあ、もうどうにか出来る算段がついているです?」
「術式自体は一応問題ない。ただ、他の部分で解消しないと駄目な問題がある」
「他の部分……? 必要な素材がないとかです?」
「ああ、その通りだ。実は、俺たち側の世界だとどこで手に入るのか、いまいち分からん物が2つあってな……」
「それは何なのです?」
「レメトン氷晶とエルメの紅焔石だ」
ラディウスの返答に、メルメメルアは「レメトン氷晶……エルメの紅焔石……」と呟きながら思案する。
「レメトン氷晶……は、たしかシルスレットの産物だった気がするです」
しばしの時の後、そんな風に言うメルメメルア。
それに対し、セシリアが首をかしげる。
「シルスレット……って、どこ?」
「地図だと……この辺りなのです」
「えっ? ここって……メルティーナ法国?」
メルメメルアが開いた地図の一点を指さす。
そこはセシリアの言う通り、ラディウスたち側の世界では、メルティーナ法国のある場所だった。
「な、何!? マジか!? ……マジでメルティーナ法国のある辺りだな……。って事は、メルティーナ法国へ行けば手に入るかもしれないって事か……」
ラディウスは作業をしていた手を止めてしまう程に驚き、地図を覗き込んでそう口にする。
「残るはエルメの紅焔石……でしょうかです?」
「それなのですが……『紅冥晶』の加工品ではないかと思うのです」
カチュアに対しそう言った所で、
「あ、それってたしか、ブロブメルターとか呼ばれる代物だよね。前にラディが説明してくれたっけね。ヴィンスレイドが大量に集めていたんだっけ?」
と、そんな風に言うセシリア。
「ああ、たしかにそんな話と説明をしたっけな。……しかし、紅冥晶からそんな物作れたっけか……? いやまあ、俺もエルメの紅焔石に関しては売られている物を買った事しかないから、どうやって作られているのかは、良く知らないんだが……」
「私もうろ覚えで申し訳ないですが……以前手に入れた『加工素材全集』という古代の書物――をコピーしたものにその名があったような気がするです」
「『加工素材全集』……。随分と便利そうな代物だな。それは今どこに? 持っていたりするのか?」
「いえ、私の部屋なのです……」
ラディウスにそう答え、肩を落とすメルメメルア。
「……やっぱりそうだよなぁ。ま、そいつはしょうがない。……しかし、そうだからといってここから帝都まで戻って、その本を回収するってのは……さすがに厳しいな……」
そう言いながら、ラディウスはさてどうしたものか……と、思った。
前回に引き続き、久しぶりな代物の登場です。
といったところで、また次回! 更新は明後日、金曜日の予定です!




