第8話 呪物と常駐魔法。足りないピース。
「今度は何があったのです?」
事情を知らないメルメメルアが問いかける。
それに対してカチュアが、
「実はでしてですね――」
と、メルメメルアにあの後からこれまでの出来事を説明。
聞き終えたメルメメルアは納得したような表情で、
「なるほどなのです。レビテーションとグラビティコントロールを重ねる……ですか。相変わらず無茶苦茶なのです」
なんて事を言い、やれやれと言わんばかりに首を横に振った。
「まあ、無茶苦茶なのは分かっているが、これくらいやらないと、あいつらを撒ける気がしない。……実の所、街を出た後もどうしたものかというのはあるが……とりあえず、広域グラビディコントロールの魔法を組み込んだガジェットを作らないとな」
ラディウスはそう言うと、早速ガジェットを作り始める。
「でも、こっちの世界も何度も長時間いるのは無理だよね。追っ手がかかる可能性があるし」
「追っ手ですか? です」
「ああうん、聖木の館の連中だね。一度は撃退したけど……」
「――エリミネーター、ですねです。……あれは半分、人ではなくなっている存在ですです。なので、たしかにあまり悠長にはしていられませんです」
「え? 半分、人ではなくなっているって?」
「はい、私はあそこで見ましたです。人の腕を切り落し、代わりに異形の腕を繋げるその光景を……」
セシリアとカチュアの会話を聞いていたラディウスは、作業をしながら思う。
――それって……あのヴィンスレイドの一件の時、ルティカという冒険者に植え付けられていた……
ここに来て、妙な繋がりが出てきたな……。一体何がどうなっているんだ?
「……もしや、聖木の館は失われた『インプラント』による『異形化』を……私たちのような封魂術を用いて時を超えてきた人間を改造した『魔人化』の技術を、現代の人間に転用する実験を行っている……です?」
メルメメルアがそんな推測を口にする。
「……ああ、俺もその可能性はあると思う。そうであれば、こっちの世界で時を遡る前の、ディーゲルの屋敷でメルを殺したあの時のディーゲルの娘についても、なんとなく納得がいくからな」
ラディウスはそう言葉を発しながら思考する。
――そう……あの動き、異形化――『魔人』と化していたのであれば、納得出来るというものだ。
だが、それと同時に、聖木の館で行われている実験は、それだけじゃない気がするんだよな。
それだけであれば、そんな大掛かりな施設を作る必要はないはずだ。
……ヴィンスレイドのやろうとしていた事もそうだが、どうにも推測の最後の最後で、今ひとつ噛み合わない部分が出てくるのはなんなんだ……?
なんというか、こう……まるでパズルのピースが足りていない、そんな感じだ。
……一体なんだ? 何が足りていないというんだ……?
『インプラント』とか『魔人』とか、かなり久しぶりな登場となった用語な気がします……
2つの世界の話が交互進行している関係で、どうしても間が空き気味に……
なんとかしたい所ではありますが……
といった所で、また次回。次の更新は明後日、水曜日の予定です!




