第1話 呪物と常駐魔法。レインズとジェイクス。
「――というわけで、何らかの魔法を受けているのかも」
「……なるほど、たしかにレインズがいながら足音を消す事を忘れるとか、不自然ではあるな」
馬車の中で、セシリアの説明を聞いたラディウスがそんな風に返す。
「……急に何を言っているの分からないのだわ。話の繋がりがさっぱりなのだわ」
「安心しろ、私も理解出来ない」
「……最近、ラディとセシリアの間の会話が唐突に飛ぶというか……ふたりの間でしか分からないようなやり取りを、間に挟んでいるような感じがするのよね……」
「ふむ……。ふたりは幼馴染みなのだろう? 以心伝心……のようなものがあるのではないか?」
「まあ、私もお父さんやお母さんとは何も言わなくても通じる時があるから、わからなくはないけど……」
「マクベインも、私が口を開く前に、言いたい事を理解してくる事が良くあるのだわ」
ラディウスとセシリアの会話を聞いていた面々がそんな事を口にする。
「「あ」」
――う、うっかりしてた……
「あー、えーっと……以前、レインズから聞いていた奇妙な話についてちょっとな」
「そ、そう。可能性の話をしていたんだ」
かなり強引としか言いようがないが、そんな風に誤魔化すラディウスとセシリア。
「どういう事なのだわ? 分かるように話すのだわ」
というクレリテの言葉に同意するように、ルーナとカルティナが頷いてみせる。
ラディウスとセシリアは互いに顔を見合わせ、小さく首を縦に動かすと、向こうの世界でカチュアから得た情報だという事は言わずに、なんとかレインズが何らかの魔法を受けて、正常な判断が出来なくなっている可能性がある事を皆に伝える。
「……なるほど、我が父――おっと、レインズが何らかの魔法を受けている……か。言われてみると、時を遡る前のオードとカチュアの捜索時に、少しばかり思考を操られているような……所々で我々を誘導するような動きをしていた気がするな……」
頬に拳を軽く当てながら、そんな事を呟くように言うカルティナ。
ラディウスのカルティナの言葉を聞き、たしかにそんな言動をしていたように、今なら思えた。
「――たしか、レインズって俺たちと出会う前……時を遡る前の時間軸で、仮面の連中――ビブリオ・マギアスを見つけた後、ジェイクスと行動していたと言っていたよな……?」
「ああ、たしかにジェイクスと仮面の連中について軽く調べた……みたいな事を言っていたな」
ラディウスの問いに対し、カルティナが頷いてそう答える。
「……それ、ジェイクスに魔法をかけられていると考えていいんじゃないかしら? しかも、時を遡ってきてもなお継続しているという点を踏まえると、マークスおじさんの時と同じように、常駐魔法の呪物が使われている……のかもしれないわね」
「ああ、たしかにありえるな。ヴィンスレイドがビブリオ・マギアスと関係があるのなら、あの連中が呪物のひとつやふたつ所持していた所で別におかしな事ではないし。……いや、魔軍事変の時の黒幕だった奴や地下神殿で見つけた代物の事を考えると、呪物よりも面倒な物を所持していそうだ」
ルーナの推測に得心がいったラディウスはそう答え、そして思う。
――もし呪物、あるいはそれに類する代物であるならば、速やかに解除する必要がありそうだ。
なにしろ、それを介して追跡されている、される可能性も考えられるしな。
と。
レビテーションの魔法に引き続き、呪物の話も大分久しぶりな気がします……
といった所で、また次回! 次の更新は明後日、火曜日の予定です!
(ほぼ)12時更新(つまり、こちらと同時)になった、最新作『ファンタジー世界の大魔道士、地球へ転移す ~異世界生まれの高校生?~』も、よろしければお読みください!




