第3話 地下水路逃走作戦。レビテーション。
「――とりあえずこのガジェットを使えば、改造してあるレビテーションが使える。3人くらいなら余裕で浮かせられるから安心してくれ」
「思った通り規格外な性能なのです。レビテーションは普通、自分にしかかからないはずなのです」
「たしかにその通りですね、です。色々納得しましたです」
「だってラディだし」
ラディウスの説明に対し、そんな事を小声で呟く他の3人。
ラディウスはそんな呟きをスルーし、
「浮いてしまえば足音は消えるから、そのまま出口まで浮いて進めばいい。ヘイジーミストやアンチビルレントといった魔法も使えるんだが……まあ、そっちはおそらく『仮面』を付けている連中は効かないだろうな」
と説明を続けながら、以前作ったガジェットをカチュアへと手渡した。
「わかりましたです! レビテーションを発動したまま移動しますです!」
「ああ。……というか、先にこれを渡しておくべきだったな、すまん」
「仕方がありませんです。私も別ルートまで塞がれているとは思いもよりませんでしたですし。ともあれ、向こうに戻ってレインズさんに伝えますです!」
「何かあったらすぐにこっちに戻って来るですよ!」
「はいです!」
カチュアは、メルメメルアの言葉に元気よくそう返すと同時に、地下水路を思い浮かべる。
……一瞬にして景色が変わり、レインズとオードがカチュアの視界に入った。
戻ってきた事を確認したカチュアがレインズに告げる。
「――レインズさん、レビテーションの魔法で水上を進んでいくのが良いと思いますです。このラディウスさんから借りたガジェットを使えば、問題なく行けますです」
「ほう、『ラディのレビテーション』か……。たしかにそれなら問題なさそうだな。だったらそこから行くとしよう。カチュア、頼む」
レインズがラディのレビテーションという所を強調しつつ、そんな風に言う。
カチュアはそれに「はいです!」と、力強く答えると、即座にレビテーションの魔法を発動した。
と、次の瞬間全員の足が地上からほんの僅かに離れ、そのまま浮かぶ。
「……わかっちゃあいたが、やっぱラディの魔法はすげぇな……」
「普通のレビテーションとは性能が違いすぎですね……」
本来のレビテーションの性能を知っているレインズとオードが、そんな事を言いながら何のためらいもなく水上へと足を踏み出す。
既にこの時点で、このレビテーションであれば何の問題もない事を納得していたからだ。
「このまま移動すれば足音も消えますです。こちらの位置を把握されにくくなると思いますです」
「把握……。……ああそうかっ! 足音かっ!」
カチュアの言葉で、レインズが何故ビブリオ・マギアスが的確に追いかけて来ているのかを理解したのか、そう忌々しげに言う。
そして、額を手で抑え、自らへの怒りの言葉を続けた。
「くそっ! 俺とした事が、奴らに足音で位置を把握して追ってくるような技量はない、と思い込んでいたぜ……。このバカヤロウッ……」
――レインズさん程の人が、その可能性を知っていながら、そんな風に思い込む事がありえるのでしょうか……です。
何か……魔法の影響を受けていると考えた方が良い気もしますです……
カチュアはレインズの様子を見ながら、そんな事を思った――
なにやら不穏な推測をしているカチュアですが……?
といった所で、また次回! 更新は明後日、日曜日を予定しています!
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