第8話 第3の転移者。完成した地図。
「と、ともかく! 話が脇道にそれまくっているから、戻すよ!」
セシリアはそんな風に言うと、コホンと咳払いをしてから、
「ほら、あの酒場跡から地下水路に降りたこの場所も、壁を隔てたすぐの場所に通路があるでしょ?」
と、地図の一点を指差して言った。
「なるほど……たしかにそうだな」
ラディウスは、その指の先へと視線を落としながらそう言うと、そのまま地図全体を見回し、そして気づく。
「行き止まりの向こう側――壁一つ隔てた所に別の水路があったり、直線で繋げばすぐの所を、何故かぐるっと大回りしていたりして、無駄としか思えない部分が幾つもあるな……」
という事に。
「あの酒場跡と市の外壁、非常に近い距離に地下水路への入口があるのに、互いに繋がっていないという所に、妙な違和感があったが……元々あったレグザダール離宮の水路と、新たに作られた水路だと考えると納得は出来るな」
「でしょ?」
「ああ。そしてここ……外壁側の地下水路は、すぐ近くに古い地下水路がある事に気づかずに作られた……と、そういうわけか」
ラディウスはセシリアに対し頷くと、地図の上――セシリアの指の近くに自身の指を置き、そんな風に言う。
「うん、そうだね。そしてそんな感じで、古い地下水路の事を把握せずに新しく作っていった結果、偶然繋がってしまった場所があったりして、最終的にああいう構造になってしまい、全容を把握出来ない巨大な迷路の如き地下水路と化したんだろうね、きっと」
ラディウスとセシリアのそんなやり取りを聞いていたメルメメルアが、
「あ、レグザダール離宮なら一種の観光地になっているので、地図を持っているです」
なんて事を言って、自身のストレージから地図を取り出す。
そして、「はいです」と言って広げた地図には、たしかに水路と離宮が記されていた。
「おお凄い! ……って、あれ? この地図に記されている水路を、私の持ってるこの地図の方に書き加えたら、地下水路の全体図が完璧に分かるようになりそうな……」
そんな事を言いながら、手に持っている地図に線を更に追加していくセシリア。
……そうして完成した地図は、まさにセシリアの言った通り、迷路の如き地下水路を網羅した代物だった。
「っていうか、離宮広すぎ! まあもっとも? 私たちの世界では宮殿部分は完全になくなっていて、水路とあの時の神殿跡くらいしか、まともに遺ってないけど」
「あの神殿まで続く地下道は、水路部分へと続く隠し通路的な存在だったようだな」
「そうみたいだね。まあ、なにはともあれ……ナイスな地図だったよ、メルメアルアちゃん!」
セシリアがそう言うと、
「メルアなのです……」
と、最早見慣れた光景となりつつある呆れ顔で返すメルメメルア。
「あ、あはは……」
メルメメルアとセシリアのやり取りに苦笑しつつ、ふと地図へと視線を落としたカチュアだったが、そこである事に気付き、そのまま言葉を続ける。
「……あれ? この地図のここの所にある入口、私たちが店を出している所から近い場所にありますですね」
というわけで、地下水路の地図が完成しました!
そして、この節も長くなって来ましたが、多分あと1話か2話で終わります。
そんなこんなで、次回の更新ですが……明後日、金曜日を予定しています!




