第7話 第3の転移者。地下水路のマッピング。
「レグザダール離宮跡には、王を外に出さない為、そして忌まわしい神殿への入口を隠すために、迷路のように複雑に入り組んだ水路が存在していた痕跡があるですが、そういった水路は存在していないです?」
「あっ 水路なら地上じゃなくて地下にだけど、たしかにある!」
メルメメルアの話を聞いたセシリアが、声を大にして答える。
「だが、あの地下水路は神殿よりもかなり後に作られた物だぞ……?」
「それなんだけど……あの地下水路って新しく作った部分と、はるか昔から存在していた部分が混ざっているんじゃないかな? あの時歩いた場所と、詰め所で貰った判明している部分を記した地図とを照らし合わせてみたんだけど……凄い無駄な水路がいくつかあるんだよね」
「あの時歩いた場所って……マッピングでもしていたのか?」
「ん? 頭の中でマッピングしていたよ? 王国の諜報員ならそのくらい出来るし」
ラディウスの問いかけにそんな風にサラッと答えるセシリア。
「そ、そうなのか……」
そう言いながらラディウスは、実は割と優秀だったんだな、セシリアって……なんて事を思ったが、そこは口にしない。
「えっとね……」
そう言いながら、自身のストレージから地図を取り出すセシリア。
そして、
「これが詰め所で貰った地図なんだけど、これに私が頭の中でマッピングしていた部分を書き加えると……」
と言葉を続け、テーブルの上に置かれていたペンを使い、地図に線を引き始める。
「す、凄いですです。よくこんなに細かい所まで覚えていますねです」
「ああ。まさかセシリアにこれほどのマッピングが出来るとは思わなかった。想定外だ」
セシリアの書いた地図に対し、ラディウスとカチュアが感嘆の声を上げる。
「……ラディ? それ褒めてる? 貶してる?」
セシリアがジトッとした目でラディウスを見ながらそんな風に言う。
「あ。……褒めているぞ?」
「……褒めているなら、『あ』と、その後の間は何かな? かな?」
「すまん。いつもポンコツなイメージしかないから、純粋に驚いた」
「うぐっ……。面と向かって謝られた上でそう言われると、逆に精神にダメージがくるね……。事実だけに……」
「たしかに事実なのです。いい加減、名前をちゃんと覚えて欲しいのです」
セシリアの言葉に頷き、そんな事を言うメルメメルア。
明らかに追い打ちになっているが、本人は気づいていない。
「ご、ごめんね、メメメルルアちゃん」
「全然駄目なのですーっ! なんでそこだけポンコツなのですーっ!」
謝るセシリアと絶叫して突っ伏すメルメメルア。
その光景を見ながら、
「どうして覚えられないんでしょうか、です」
「さあなぁ……。一度誤った変な名前で覚えてしまったせいで、まともに正しい名前が出てこなくなっているんじゃないか?」
「あー、刷り込まれてしまった名前に引っ張られてしまう感じですです?」
「そんな感じだな。俺もたまにそういうのあるし」
「たしかに、私もありますです。少し前までセヴェンカーム王国とエレンジール王国が混ざって、エレンカーム王国とかセヴェンジール王国とか言っていましたです」
と、そんな事を言うカチュアに対し――
――それは、どんな間違え方だ……?
いやまあ……でも、ある意味セシリアに近い……のか?
などと、困惑して妙な思考を巡らせるラディウスだった。
ダンジョン(というか迷路)の様な場所のマッピングは割と大変です。
なので、オートマッピングは便利です(何)
まあ、手動でも回転床とかダークゾーンとかアンチスペルゾーンとかそういうのが無ければ、まだマシですが……
しかし……ある意味、地下水路はディープゾーンだらけだと言えなくもないですね。
とまあそれはそれとして、次回の更新ですが……明後日、水曜日の予定です!
追記
タイトルに誤字があったので修正しました。




