第6話 第3の転移者。時の神殿と離宮。
「まず、状況を整理するとしよう。――向こう側の世界では、カチュアはまだ連中……ビブリオ・マギアスに捕まる前なんだよな?」
「はいです。ちょうど捕まる少し前の時間なのです」
ラディウスの問いかけにそう答えるカチュア。
「それって、レインズさんが仮面――ビブリオ・マギアスがカチュアちゃんたちを物陰から監視しているのを見かけたタイミング?」
今度はセシリアがカチュアに問いかける。
「はいです。時間が戻った直後にそっと確認してみたら、レインズさんが見えたので、その時間帯で間違いないと思うです」
「なるほどね……。うーん、そうなるとレインズさんが過去に戻っているのかが重要になるかなぁ……」
セシリアはカチュアの回答に頷き、呟くようにそう言うと、ラディウスの方を見た。
「ああ、そうだな。オードさんはあの時の事を覚えている感じだったのか?」
「覚えていたのです! この後、カレンフォート市から出た直後にビブリオ・マギアスに襲われて捕まったのなら、出ないようにするのが良いのではないかと言っていたのです」
ラディウスの問いかけにそう返すカチュア。
「なるほどねぇ……。とすると、レインズさんも覚えているはずだから、レインズさんとの合流を図るのが良さそうだね」
「まあ、レインズさんの事だから、あの日あの時に舞い戻った事に気づいたのなら、まっさきにふたりの所に行きそうだけどな」
セシリアとラディウスがそんな風に放していると、
「カレンフォート市というのは、どこにあるです?」
と、メルメメルアがもっともな問いを投げかける。
「ああ、この世界で言うと……帝都の北側になると思うが……」
「帝都の北……です? それって、レグザダール離宮跡がある辺りです?」
「レグザダール離宮跡……?」
問われたラディウスの方が、聞いた事のない地名に首を傾げた。
「古の時代に不慮の事故で子を失った王が、ふらりと訪れた『魔術師』に、蘇生の儀式を行う事が出来ると言われ、そのために必要な『時の神殿』を作ったのです。ですが、魔術師の要求してきた蘇生の代償として、10万の人間の命が必要になると言われ、それを実行しようとした王は、宰相や将軍たちによって阻止され、魔術師も処刑されたのです。しかし、王はそれでも儀式を行おうとしたので、やむなく宰相たちは神殿を封じるような形で『離宮』を作り、そこに療養のためという名目で、王を幽閉したのです」
と、そんな説明をするメルメメルア。
「時の神殿……。まさか、あの地下神殿がそうなのか?」
ラディウスが地下神殿の事を思い出しながらそう呟くように言うと、
「その可能性は高そうだけど。でも、カレンフォートやその近くに『離宮』なんてなくない?」
という疑問を口にするセシリア。
「たしかにないが……それに関しては、歴史の分岐の結果、向こうの世界では何らかの理由で崩壊したり埋もれたりして消えてしまい、そのまま存在ごと忘れられてしまった、と考えられなくもない。こっちの世界にある『レゾナンスタワー』も、向こうの世界には存在していないしな」
そう答えつつラディウスはふと思った。
――だが……オードさんとカチュアが囚われていたあの場所が、実は地下に埋もれる形で遺された離宮の一部であった可能性は十分にありえるな。なにしろあそこの構造は、帝都の皇帝宮殿の監獄に似ていたし……
と。
ちなみにですが……こちら側の世界には、カレンフォート市がある辺りには街が存在していません。
といった所で、また次回! 更新は明後日、月曜日を予定しています!
追記
タイトル名に誤字があったので修正しました。




