第3話 第3の転移者。カチュアとメルメメルア。
「あれ? カチュアちゃんとメルメルメールメちゃんって面識あるの?」
というセシリアの発言に、練れば練るほど美味しくなりそうな名前だな……なんて事をラディウスが思っていると、
「メルメメルアなのです!」
と、セシリアに対し憤慨しながら名前を正すメルメメルア。
そして、コホンと咳払いをしてからカチュアの方を見て、
「やっぱりカチュアだったですか……。同じ時代で再会出来て良かったのです」
と言った。
「はい、私もそう思いますです! あ、面識があるかどうかについてですがです、私とメルおねーちゃんは、同じ研究所で誕生したのですよです」
「研究所……。聖木の館のはずはないから……古の時代の、か?」
カチュアの話を聞き、問いの言葉を返すラディウス。
それに対し、カチュアの代わりにメルメメルアが「その通りなのです」と答える。
「獣人……。研究所……。今まで気にしていなかったが、獣人というのは、もしかして自然発生した存在ではなく、生み出された存在……なのか?」
ラディウスはふと気づいたその事について問いかけると、
「あれ? ご存知なかったのです。ラディウスさんなら普通に知っていると思っていたのです。――その通りなのです。元々、この世界には獣人という存在はいなかったのです。なので、個体数がかなり少ないのです」
と、そんな風に言うメルメメルア。
「そう言われると、獣人ってほとんど見かけないよね。海の向こうにある別の大陸から渡って来た存在だから少ない、というのが一般的に言われている話だけど……」
「獣人とは、封魂術を巡る数多の実験の中で、何らかの方法によって、純粋な人間から獣人化した存在、あるいは最初から獣人として産まれるように調整された存在、もしくはそうして生み出された獣人と純粋な人間との間に産まれた存在、そのどれかなのです」
と、そこまで言った所で、メルメメルアは一度言葉を切る。
そしてラディウスの方を見て、
「……まあ、妖姫様のように、試験管の中で人工的に獣人として生み出された存在もいるにはいますが……古の時代といえども、あまり倫理的に良い行為ではないとされていたので、本当に極少数なのです」
なんて事を言った。
――妖姫とかは『人の名前』であるとは言えないような、『名称』だったのが気になってはいたが……そういう事か。
そうラディウスが納得していると、
「あれ? って事は、カチュアちゃんって獣人なの? 全然そうは見えないけど」
という疑問の言葉を、セシリアが口にする。
それを聞き、ラディウスはたしかに獣人には見えないなと思いながら、カチュアへと顔を向ける。
「あ、はいです。私はハーフなので、獣人らしい所がすくないんですよです」
そう言いながら、カチュアは自らの服の袖を捲くり上げる。
すると、白い鱗が所々にまばらに見える肌の綺麗な、しかし細い腕が顕となった。
というわけで、カチュアは本作では数少ない(ラディウスたち側の)獣人種その2です。
あまりにも少ないので「獣人」という単語が、そもそもほぼ出てこないんですよね……本作。
とまあ、そんな所でまた次回! 次回の更新は明後日、火曜日を予定しています!




