第5話 地下に秘されし物。かつての世界と今の世界。
「あの仮面……例の魔物の軍勢を率いていた奴が着けていた物とほぼ同じだわ……」
「ふぅん、なるほどねぇ……。あれは『ビブリオ・マギアス』の引き起こした物だったってわけだね」
ルーナとセシリアがそんな風に言うのを聞きながら、ラディウスは思う。
――時を遡る前の世界でも、魔軍は魔王を自称していた人間……北のセヴェンカーナ王国――王位をクーデターによって奪った軍閥貴族とその一派が率いていた。
だからこそ魔王討伐を名目に、あの日……時を遡る直前のあの時、セヴェンカーナに侵攻を開始したのだから。
……もっとも、セヴェンカーナの民を開放するという名目で、王国民のための労働力と金を得るのが目的であったのは明白だし、兵もその事を理解している者が多かったのだが。
あの時、降伏勧告を無視した貴族共々、彼の地の民を俺の生み出した兵器で鏖殺したのは、侵攻軍総司令の『王国よりも多い人口を管理するのは難しい』という判断のもとだったしな。
あの時の王国はもう、上も下も既にまともな思考ではなかったとしか言いようがない。
……しかし、魔軍を率いていたのはビブリオ・マギアスだったという事は……彼の軍閥貴族とその一派は、ビブリオ・マギアスと繋がりがあったか、あるいは連中自体がビブリオ・マギアスの一員であったという事なのだろうか……?
今の時代から見ると、未来の事だから上手くやれば、その辺も知る事が出来そうだが……
ラディウスがそんな感じで思案していると、
「あれを突破して脱出するのは、なかなか厳しいな……。さて、どうしたものか」
と、カルティナが呟くように言う。
「突破しようとしなければいいのよ」
「む? どういう意味だ?」
「殲滅すればいいだけの話じゃない」
首を傾げるカルティナに対し、腕を組みながら、さらっとそんな事を言ってのけるルーナ。
横のセシリアも同意するように首を縦に振る。
「……いや、まあ……それは、まあ……そうかもしれないが……」
呆気にとられつつ、額に手を当ててそんな風に言うカルティナと、何やら思案を巡らせ、
「この牢獄部分は行き止まりで逃げ場はない。だが、逆を言えば後ろから攻められる事もない。前から来る敵をこの狭い通路を利用して迎え撃てば、どうとでもなる……か」
と、そう見解を述べるレインズ。
「ふむ……たしかにそう言う考え方もあるか」
レインズの見解に対し、カルティナが納得の言葉を口にした所で、
「――よし、ここで迎撃するとしよう。カルティナとレインズにも攻撃用の魔法を組み込んだガジェットを渡しておくよ」
そう告げて、カルティナとレインズに攻撃魔法の組み込まれたガジェットを渡すラディウス。
「こいつは……なんとも強力な魔法ばかりだな」
「ああ。だが、これならたしかに……」
レインズとカルティナがガジェットに組み込まれた魔法を認識し、そんな感想を口にする。
「それじゃ、一斉に魔法を撃ち込んで先制攻撃って感じかな?」
「そうだな。ただし……神殿自体を崩壊させない程度の魔法で、だけどな。んで、その後は倒しきれなかった奴への追撃、および迫ってくる奴の迎撃あるのみだ。カチュア、合図を頼んでもいいか?」
セシリアの発言に同意し、そう答えるラディウス。
「あ、はいですっ! 了解しましたですっ! 魔法の発動準備が整った所で合図しますですっ!」
それに皆が頷き、各々が攻撃魔法の発動準備に入る。
そして、そのまま即時発動可能な状態を維持し――
「どうぞですっ!」
というカチュアの声に合わせて一斉発動。
氷、雷、光、そして闇2種――計5つの魔法が同時に乱れ舞い、ビブリオ・マギアスの構成員たちを、悲鳴すらまともに上げさせる事なく、瞬く間に、そして無慈悲に、薙ぎ倒していく。
それを見ていたオードとカチュアが、
「これはまた、なんとも凄い光景ですね……。これが英雄の魔法ですか……」
「はいです。まさか、これほどの威力を持っているとは思いませんでしたです。今まで実際に見た事はありませんでしたですから」
なんて事を呟くように言ったものの、魔法の生み出す爆音に掻き消されてしまい、それがラディウスたちの耳に届く事はなかった。
魔法一斉発動の所、最初は(例のとても効果の分かりづらい)魔法名を並べたのですが、なんというか……元々それ自体が呪文感ありすぎる名称な事もあり、連発するとどうにも微妙すぎたのでカットしました。
次の話では(機会があれば)、5連発とかにならない様に注意しつつ出します!(何)
といった所でまた次回! 次回の更新は明後日、金曜日の予定です!




