第4話 地下に秘されし物。囚われし親子。
カルティナとレインズによって発見された商人の親子――オードとカチュアの居場所へとやってきたラディウスは、その光景に驚く。
――これは……向こう側の世界の宮殿――正確に言うと、そこに造られた妖姫が囚われていたあの監獄にそっくりだな……
どうしてこちらの世界にこんなものが……? しかもこんな大昔の地下神殿に……
「床も壁も天井も、見た事もない材質で造られているわね……。金属っぽい物……というのだけはなんとなく分かるけれど……」
周囲を見回しながらそんな風に呟くルーナに、
「そうだね。しかもこれ、神剣でも傷一つ付かないくらい頑丈だよ」
なんて事を言うセシリア。
「これを破壊するのは、かなり骨が折れるだろうな」
ラディウスはそうふたりに言うと、レインズの方へと向き直り、問う。
「それで、あのふたりは?」
「ああ。この先の分岐を左に曲がった所だ」
レインズはそう答え、ラディウスたちを誘導するように先を進む。
そして分岐を曲がって間もなくの所で、
「ここだ」
と、並ぶ牢のひとつを指し示す。
ラディウスがその牢へと視線を向けると、妖姫の囚われていた牢と同じく、施錠されている事を示す赤のランプが点灯しているのが見えた。
「なるほど……。これならすぐに解除出来るな」
そう呟くように言ったラディウスに、
「その声は……ラディウスさんですかです? 本当に来たのですねです」
という、独特な言葉遣い――カチュアの声が返ってくる。
「ああ。すぐに開けるから待っていてくれ」
と言ってラディウスは、妖姫の囚われていた牢を開いたガジェットを使い、文字通りすぐに解錠を完了。その事を示すようにランプが赤から青へと変わる。
ラディウスが扉を開き中に入ると、鎖で拘束されたふたりの姿があった。
「あっさりと解錠してしまわれるとは……。さすがでございますね……」
そう言ってくるオードの顔には疲労が浮かんでいたが、幸いにも外傷の類は見当たらなかった。
「どうしてこんな事になったのか聞きたい所ですが……その前に外へ出るとしましょう。まずは鎖を――」
――幸い妖姫を拘束している鎖と違って、これは普通の鉄の鎖だ。
ガジェットの魔法で十分切断出来るとラディウスは考え、切断するためのガジェットをストレージから取り――
「――ぶった斬っちゃえばいいんだよね? 任せて!」
……出す前に、セシリアがそんな風にラディウスの発言に続く――いや、割り込む形で言葉を紡いだかと思うと、神剣を連続して振るい、ふたりを拘束していた鎖をバラバラにした。
――よくまあ、こうも器用に斬り刻めるものだな……
ラディウスは感嘆と嘆息の入り混じった心の声を呟きつつ、
「このまま脱出しようと思いますが……歩けますか?」
と問う。それは、カチュアは抱えて運べなくもないが、オードの方は少々厳しいので、自力で歩いて貰うしかないと考えたからだ。
「大丈夫です」
「私も問題ありませんです」
ふたりともそんな風に言ってくる。
カチュアの方は抱えた方が良いのではないかと思い、そう提案するラディウスだったが、カチュアは再び問題ないと告げ、駆けていく。
「まあ……少し心配ではあるけど、ああ言っている以上、無理に抱えない方がいいんじゃないかしらね?」
「うむ、そうだな。むしろここは、周囲の警戒を優先するとしよう。こうも何も動きがないのが不気味なくらいだからな」
というルーナとカルティナの言葉もあって、カチュアもオードも自力で歩いて貰う事になった。
そうして監獄から祭壇のある広間へと差しかかった所で、
「……まあ、やっぱりそうだよね」
と、うんざりとした声で呟くように言うセシリア。
その発言に対し、条件反射的にマリス・ディテクターを使うラディウス。
――広間にマリス・ディテクターでの反応が急に現れた?
今まで悪意と殺意を消して潜んでいた? いや……先程まで俺たちはあそこにいた。
何らかの方法で俺たちの動きを察知し、脱出路を封鎖するように動いた……といった所か。
だが、先程反応した数よりも遥かに多くなっている……どうやって、そしてどこから集まって来たんだ……?
まあ……多いとはいえ、この間の魔軍に比べれば大した事ではないのが幸いだが……
広間に一斉に出現した『ビブリオ・マギアス構成員』に対し、ラディウスはそんな思案を巡らせつつ、銃をストレージから取り出し、そして構えた。
前話に引き続き、2話分あった内容をテンポ重視で色々とカットしました。
というより、敵地で長々と話しているのもどうなのかと思いまして……
とまあそんな所で、また次回! 次の更新は明後日、水曜日の予定です!




