第2話 地下に秘されし物。隠された通路の先。
「うん、あまり難しい物じゃなかったわ。古いからなのか分からないけど、構成が単純だったわ」
術式を強制的に動作させたルーナが、さらっと言うと、
「そ、そうかなぁ……。普通はこんな簡単に動作させられない気がするけど……」
と、頬を掻きながら呆れ気味に言うセシリア。
実際、その術式は並の魔工士では動作させるどころか、構成を理解する事すら困難な代物だったりするのだが、より複雑な術式をあっさり解除してしまうラディウスのせいで、ルーナにはそこまで難しくないように感じてしまっていたのだ。
「それにしても、この通路だが……随分と古い感じがするな」
「ああ、たしかにそうだな。周囲よりも古い時代に作られた物っぽい雰囲気だ。しかも下へ向かって坂になっているな」
カルティナの言葉に同意し、そう言いながら、古めかしい作りの通路を覗くラディウス。
「あー……。たしかになんかちょっと古い……っていうか……伯爵邸の地下――要するに『あの遺跡』と同じ感じかも」
セシリアの言葉を聞き、「うん?」と口にして石壁に触れるレインズ。
そして、石壁をその目と手でしっかり確認した後、
「……なるほど、石の感じはあそこの物に似ているな。いや、ほぼ同時期に作られたもの……か?」
と、言った。
「うん? レインズはそんな事までわかるのか?」
「ああ。これでも遺跡には結構な数潜っているからな。その遺跡がどこの遺跡に似ているかとか、どの遺跡と同じ時代のものかとか、自然と分かるようになっちまったんだ」
カルティナの疑問にそう答えるレインズ。
「そうなのか……それは凄いな。しかし、そうなるとやはり、ここだけ地下水路が出来る前からあった……という事になるな。――ガジェットが壁に組み込まれていたのは、地下水路を作っている最中に偶然見つけてしまい、念の為、通路を残しつつ封鎖した……という感じか?」
ラディウスの推測に対し、セシリアが小舟を見て、
「あるいは意図的につなげて、あくまでも地下水路の一部分であるように見せかけつつ、本命のこの通路を隠したか、かな?」
と言った。
「ああ、たしかにその可能性もあるな。ここの地下水路、小舟が入れる程度の広さが確保されているし」
そう言いながら、ラディウスはルーナの動作させたガジェットの魔力を調べると、皆に対して、続きの言葉を紡ぐ。
「――そして……やはりと言うべきか、ルーナが動かす前にも誰かが動かしているな。しかも、つい最近だ」
「うーん……。通路にも人が通った――というか、ここまでの痕跡と同じ物が僅かにあるね」
と、壁と床を調べながら告げるセシリア。
「それって要するに……仮面の連中はこの先へ行ったって事よね?」
「うん、その可能性がとても高いね」
ルーナの問いかけに頷き、肯定するセシリア。
「であれば、この先へ行ってみるしかなかろう」
というカルティナの言葉に皆が同意し、通路を進んでいく一行。
通路はウネウネと曲がりくねってはいるのものの、一本道で迷う要素はなく、一行はひたすら進んでいく。
と、しばらく進んだ所で、レインズが前方と後方を交互に見て言葉を発する。
「む。ここで坂が終わっているな」
「ああ、たしかにここから先は平坦だな。代わりに天井が徐々に高くなっていっているようだ」
というラディウスの言葉の通り、今までずっと下っていた通路がそこから先は平坦になっていた。
そして、その代わりに天井にわずかな傾斜があり、徐々に天井が高くなっていく造りになっていた。
「これ……ここまでの移動時間から考えて、確実に市外に出てるよね?」
「そうね……。距離的にはたしかにそうなるわね。しかも、ここまでの坂の傾斜と距離を考えると、そこそこ深い場所になるわ」
セシリアの疑問にそう答えるルーナ。
「まあ……そろそろ何らかの変化があるという事なのだろう。慎重に進むとしよう」
と、カルティナ。
それに皆が同意し、更にしばらく歩いていくと、天井までの高さが坂の終わりの時点の約5倍近くにまでなった所で、急に開けた場所に出た。
「これは……神殿……か?」
ラディウスがそう呟いた通り、一行が辿り着いたそこは、エンタシスが等間隔で立ち並び、奥に祭壇のようなものがある、まさに神殿のような奇妙な場所であった……
想定よりも会話が少し長くなってしまった為、一旦途中で区切るかどうか迷ったのですが、神殿(のような場所)に入るまではやっておきたかったので、そこまで進めてしまいました。
さて、そんな所で次回の更新ですが……明後日、土曜日を予定しています!




