第1話 地下に秘されし物。水路の仕掛け。
「本当にあっさり解除するとは……さすが、英雄と言われるだけはあるな」
「うーん……。私も大分術式には詳しくなってきたけれど、これをこの速さで破るのはちょっと無理だわ……。もちろん時間をかければ可能だけど、それじゃあまり意味ないし……。さすがはラディって感じよね」
あっさりと魔法による施錠を解除したラディウスに対し、レインズとルーナがそんな事を口にする。
それを聞いていたカルティナは、何を言っているんだと呆れながら、
「いや、出来ないわけではないという時点で十分凄いし、意味があると私は思うんだが……」
と、ルーナに告げた。
「そうかしらね?」
「そうだとも。……ルーナも大概に感覚がおかしくなっているぞ……」
などという話をしていると、先行して地下に降りていたセシリアが、階下から上にいるラディウスたちへと声を投げかけてくる。
「うん、やっぱり下は地下水路だね。ただ、向こう――外壁の入口とは繋がっていない感じだよ」
「まあ……繋がっていたら、こっちから地下水路に入る意味がないしな」
「カレンフォートの地下水路はかなり入り組んでいて、警備の兵士たちですら、全容を把握していないらしいわよ。さっき詰め所に行った時にそう言っていたわ」
ラディウスの言葉に続くようにして、そんな説明をするルーナ。
「うーん……やっぱりというかなんというか、誰かが通った痕跡が残っているね。この感じだと……外で偽装していたのと同じ――つまり、仮面の連中じゃないかな?」
セシリアが周囲を注意深く確認しながら言う。
「ま、あんな施錠の魔法が使われている時点でここが正解だと言っているようなものだしな。慎重に先へ進むとしよう」
というラディウスの言葉に皆が頷き、地下水路を歩いていく。
そうして程なくすると、水路の広くなった所に小舟が置かれているのが見えてきた。
「……どうしてこんな所にこんなものが?」
「見た感じ、少し古そうな感じだが……動くのか?」
カルティナとレインズの言葉を聞きながら、ラディウスは解析を試みる。
――動力部分の魔力機関、および術式は全て正常、か。
だが……先程の施錠と同じ構成の術式で、駆動部がロックされている。
つまり、これは普通に動作する状態ではあるが、古くて動きそうにないように細工――偽装されている……って事だな。
「おそらく、仮面の奴らがこれを利用して移動しているのだろう。まあ、駆動部が巧妙に魔法でロックされているから、普通に操作しても壊れているようにしか見えないだろうけどな。連中を褒めるのもあれだが、なかなか上手い偽装だ」
ラディウスがそんな風に説明すると、
「それはつまり……仮面の奴らが今現在この辺りに居る、という事か」
と、言いながら周囲を見回すカルティナ。
ルーナはそれ続くようにして周囲を見回し、そしてふと気づく。
壁の一部分に妙な違和感がある事に。
「あら? この壁……術式が組み込まれているような……? でも、なんだか使われている術式というか……魔法の構成のされ方が、大分古い物の感じがするわね……」
と、呟きながら壁を凝視するルーナ。
「これは……壁そのものがガジェットだな。で、魔法で動くようになっている」
解析しながらラディウスが言う。
「あ、なるほど……そういう事ね。だとすると……ここがこうなってこうなるから……。うん、このくらいなら私でも簡単に操作出来そうね」
なんて事を言いながら、術式を弄るルーナ。
そして、あっさりと術式が動作し、壁が下へと沈んでいく。
そして――
「おおっ、このような通路が隠されていたとは……っ!」
と、カルティナがそんな風に言うように、壁の裏に隠されていた通路がその姿を顕にしたのだった――
地上(廃屋)部分の進行速度がイマイチ良くなかったので、地下は進行を早めにしてみました。
若干すっ飛ばしすぎた感もしなくはないですね……
といった所で、また次回!
更新は明後日、木曜日を予定しています!




