第11話 あの親子を探して。建物の正体。
神剣を手にしたセシリアを横目に、ラディウスはマリス・ディテクターを発動。
こちらに対し敵意を持つ者――すなわち、仮面の連中などが潜んでいないかを素早く確認すると、
「マリス・ディテクターの反応はないな」
と、告げた。
「了解! それじゃあ、ちょっと行ってくるね!」
そう言い残してセシリアは神剣を右手に持った状態で跳躍。
窓枠に左手をかけると、その態勢のまま神剣を振るって鉄の格子を切断した。
「細工を弄ってスライドさせれば良いだけなのに、どうして壊してるのかしらね……?」
「さあ……? 壊した方が早いと思ったんじゃないか?」
「……そうね。セシリアならそう考えてもおかしくないわね……」
セシリアの動きを見ながら、呆れ気味にそんな事を口にするルーナとラディウス。
「なんというか……聖女のイメージが大きく変わるな、これは」
「だなぁ。まあ、俺は伯爵の一件で聖女のイメージは結構変わっていたんだが……まさか、あんな曲芸めいた動きまで出来るとは思わなかったぜ」
と、こちらも同じくセシリアに視線を向けつつ言う、カルティナとレインズ。
「まあ……なんだ? 聖女と言っても、その前に『神剣の』って付くからな。ある程度は剣士のような動きも出来るって事だな」
「なるほど……。正直、ある程度どころか並の剣士以上の動きだが……でも、そう言われると、たしかに納得出来るっちゃあ納得出来るな」
ラディウスの言葉に納得してそう返すレインズ。
カルティナも同じく納得したらしく、頷いてみせる。
「窓の方に鍵とかはかかってないみたいだね」
セシリアはそう言って窓を開き、建物の中へと侵入。
素早く周囲を探って人の気配がしない事を確認すると、すぐに窓から顔を出し、
「とりあえず、トラップの類もなさそうだよ」
と、ラディウスたちに告げた。
「トラップの有無までわかるとは……」
「ま、神剣の聖女だからな」
ラディウスはカルティナの呟きに対し、先程のセシリアと同じように、答えになっていない答えを返すと、即座に跳躍。窓枠に手をかけ、建物の中へと侵入する。
「この建物、全体的に部屋が多いな……」
部屋から廊下に出て、周囲を探るように歩きながら、そんな事を呟くラディウス。
「たしかにラディの言うとおり、部屋や廊下は宿屋の作りにそっくりだわ。……でも、それにしては部屋が狭くて壁が分厚いわね……。防音処理まで施されているみたいだし」
「多分だが……ここは、かつて娼館の類だったんじゃねぇか? 1階に窓がない事、2階の窓に格子がある事……色々な部分が、俺の見聞きした情報と合致する」
階段から階下を覗いたレインズが、ルーナの言葉に続く形でそんな推測を述べる。
「娼館……ね。この国では数十年前に禁止されたと聞いているが、この手の物は禁止してもなくなるものじゃない、というのが良く分かるというものだ」
カルティナはそう言うと、やれやれと言わんばかりに首を横に振ってみせる。
「まったくだな。……ん? まだ下に続く階段があるな……。ちょっと下を見てくる」
ラディウスは更に下――地下へと続く階段を見つけ、皆にそう告げて地下へと足を踏み入れる。
そして、そこに広がる光景を見ながらラディウスは思案を巡らせる。
――うーん……牢のようなものが並んでいて、それぞれの壁に拘束具があったであろう跡と赤黒い染み……か。
ここが、ロクでもない環境だったのは間違いなさそうだな。
と。
というわけで、ようやく中に入りました。
この節、ちょっと長くなってきていますが、もう少しあります……
(もう少し区切れば良かった気もします……)
とまあそんな所で、また次回!
更新は明後日……日曜日を予定しています!




