第10話 あの時の親子を探して。入る手段の準備。
「入るのは構わないが……どうやってあそこへ行くのだ? 縄かなにかが必要な気がするが……」
カルティナが窓を見ながらラディウスに問う。
「あのくらいの高さなら、跳躍力を強化する魔法を使えば普通に届くはずだ」
「そうね。レスティア村の時も屋根の上を飛び移りながら移動したし、このくらいなら問題はないわね」
ラディウスとルーナが、さも大した事がないと言わんばかりに答える。
「いや……そのような魔法を使えるガジェットなど持っていないのだが……」
カルティナが少し呆れ気味に言い、レインズも同意するように頷く。
「あ……そうか。そうだった……」
そう言いながらラディウスは、再び向こう側の世界のモーテルを思い浮かべる。
「跳躍力を強化する魔法を組み込んだガジェットを作る感じ?」
既に慣れてきたのか、モーテルの一室に移り変わるなり、そんな風にラディウスに問うセシリア。
「ああ。あのふたりが持っていない事を完全に失念していたからな。ってなわけで、ちょっとばかし組み立てを手伝ってくれ」
「了解! そのくらいなら、さすがに慣れたから大丈夫だよ!」
などと言ってラディウスとセシリアは分担して作業を行い、あっという間にガジェットを2つ作り出した。
「よし、戻るぞ」
というラディウスの言葉と共に、再びカレンフォート市へと戻ってくるふたり。
「この間セシリアと、練習を兼ねて作ったガジェットがあるからそれを貸そう」
そう言ってラディウスは自身の作ったガジェットをレインズへと手渡す。
「はい、これね。基礎的な所はラディが作ったから安心していいよ」
なんて事を言いいながら、セシリアもまたカルティナにガジェットを手渡す。
「いつの間にそんな事を?」
「あー、えーっと……例の日曜学校の準備をしていた時にな」
「そ、そうそう。まあ、これは流石に難しすぎるから変えたんだけどね」
ルーナの疑問に、ラディウスとセシリアがそんな風に答える。
「ふーん、なるほどね……。……でも、何か隠していないかしら?」
ルーナにそう言われたセシリアは、動揺をギリギリの所で抑え込みながら、
「……そんな事ないよ? ね?」
と、ラディウスに言葉を向ける。
「……ああ。そうだな」
ラディウスもなんとか冷静さを保ちつつ答えた。
――どうも何か隠しているような気がするけど……まあ、今はいいわ。
ルーナはふたりの言動が気になったものの、今はそれを深く追求している時ではないと考え、一旦そこで問いかけるのをやめる。
そんな会話をしている間に、ガジェットを受け取ったふたりがそれを装着。
頭の中に流れ込んできた魔法とその使い方に、
「こ、こいつはまた凄いな……」
「うむ……。このような魔法が組み込まれたガジェットを作れるとは……」
「さすがは英雄と聖女というべきだな」
などという、驚愕と感嘆の入り混じった言葉を紡いだ。
「とりあえず、これで入れるようになったな」
「そうだね。格子を外して入るとしようか」
ラディウスの言葉に対し、セシリアは頷いて答えると、何故か自らのストレージから神剣を取り出した――
今回はあまり進展のない回でした……
という所でまた次回! 更新は明後日、金曜日の予定です!




