第6話 あの時の親子を探して。冒険者レインズ。
「なるほど……。商人親子がこの街で行方不明になった……と。それはたしかに由々しき事態であり、冒険者ギルドとしても早急に対応すべき案件ですね」
「そういえば先日、怪しい集団がいたという話をしていた冒険者がいなかった?」
「あ、それはグランベイルからこっちに拠点を移したレインズさんだね」
冒険者ギルドの受付嬢たちは、ラディウスの話を聞いて、口々にそんな事を言った。
ちなみにカルティナは、冒険者たちから情報を得られないかと思い、ギルド内にいる冒険者たちに、話しかけて回っている。
「そのレインズという冒険者は、今どこに?」
「昨日、行商人の護衛依頼を受けてグローネス鉱山へ向かわれたのですが、往復で1日半くらいの距離ですし、何事もなければもう帰ってきてもいいはずですが……」
ラディウスの問いかけに受付嬢がそう答えた所で、冒険者ギルドに狩人風の格好をした男性が入ってきた。
「あの人は……」
ラディウスは男性の方を見て思い出す。
その男性はあの伯爵邸の地下に囚われていた冒険者のひとりだった。
「噂をすればなんとやら、ね」
受付嬢のひとりがそんな風に言う。
そして別の受付嬢がその冒険者に対し、
「あ、レインズさんお疲れ様です。その感じだと、行商隊の護衛は無事終わったようですね」
と、そんな言葉を投げかけた。
それに対しレインズは、
「ああ、道中特にアクシデントもなかったからな」
そう言いながら、ラディウスの方を見る。
――この人がそうだったのか。
グランベイルからこっちへ拠点を移した理由は、あの一件のせいだったりするのだろうか……
その冒険者がレインズである事を認識し、そんな事を考えるラディウス。
そしてそれとほぼ同時に、
「久しぶりだな、英雄さん。アンタがここ来ているとは思わなかった」
と、腕を組みつつ、好意的な笑みを浮かべて言うレインズ。
「……普通に名前で――ラディウスでもラディでもいいが、そう呼んでくれると助かる。英雄という呼ばれ方は、なんかこう……ちょっとこそばゆいんでな」
ラディウスはそう言って頬をかく。
「俺にとってもアンタは英雄なんだけどな。まあ、本人がそう言うならそうするぜ」
レインズは苦笑交じりにそう言うと、組んでいた腕を解き、
「――それと……あん時はゴタゴタしていてしっかり礼を言えなかったんでな。今更ではあるが……改めて言わせて欲しい。――ラディ、俺はお前のお陰で今もこうして無事に冒険者稼業を続けていられるってもんだ。あの時、お前があの場に来てくれた事に感謝するぜ。ありがとうな」
そう礼の言葉を述べて深く頭を下げた。
「それに関しては、私もお礼を言わせて欲しいかな。レインズさんを助けてくれてありがとう」
何故か受付嬢のひとり――レインズの名を最初に出した受付嬢が、そんな風に言う。
唐突にお礼を言われた事に対し、不思議そうな顔をするラディウスに、
「あ、この子とレインズさんは恋人同士なんですよ」
と、説明してくる別の受付嬢。
「ああなるほど、そういう事か。……ん? もしかして拠点をこっちに移したのも、それが理由なのか?」
「あ、ああ……。まあ……そういう事だな」
ラディウスの問いかけに対し、やや気恥ずかしそうに答えるレインズ。
そしてすぐに頬を掻きながら、
「そ、それはそうと……ラディはどうしてこの街に来たんだ?」
などと、話を逸らすように疑問の言葉を続ける。
それに対して、レインズの恋人だという受付嬢が、
「あ、それなんだけど――」
と、言葉を切り出し、ラディウスの代わりにこれまでの経緯を説明し始めるのだった。
というわけで(?)1章終盤~2章序盤にチラリと登場した冒険者の再登場となりました。
ちなみに……というわけでもないですが、同時期に登場したあの2人もいずれ再登場する予定です。
さて、そんな所でまた次回! 更新は明後日、木曜日の予定です!




