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第5話 あの時の親子を探して。カルティナの思う事。

「――とまあ、そんなわけなのよ」

「なるほど……レマノー村の商人親子の行方が知れない、と……。それは由々しき事態だ。――わかった。私も協力しよう。冒険者ギルドで何か情報が得られるかもしれないからね」

 ルーナからこれまでの経緯について聞いたカルティナが、そんな風に言う。

 

「だとしたら、冒険者ギルドに行くのと、詰め所に行くので分かれた方がいいわね」

 というルーナの発言にラディウスは、瞬時に向こう側に移動して合流可能な自分とセシリアは別行動の方がよさそうだと考え、

「そうだな。うーん……俺とカルティナで冒険者ギルドへ行って、ルーナとセシリアが詰め所って所か?」

 と、そう提案すると、セシリアがラディウスの意図を理解して同意した為、その形で二手に分かれる事になった。

 

「――それにしても、神剣の聖女というのはどういう人物なのかと思っていたが……思ったよりも普通な感じなのだな」

 冒険者ギルドへの道すがら、そんな感想を口にするカルティナ。

 

「まあ、元々聖職者だったわけじゃないしな」

「そうなのか?」

「ああ。セシリアは元々行商人の娘でな。俺の生まれ故郷である村にも定期的に来ていたんだ」

 ラディウスはセシリアが諜報員である事は言わず、それだけをカルティナに伝える。

 諜報員である事を伝えた所で、誰かに言いふらしたりはしないだろうとは思ったが、セシリア自身が言わない限りは言わないのが正しいだろうと考えたのだ。

 

「ふーむ……なるほど。いわゆる幼なじみという奴か。それでラディとの距離感――心の距離が近かったのだな」

「心の距離……と言われても良く分からんが、互いに気心がしれた仲ではあるな」

「――気心がしれた仲……か。私にもかつてはいたのだろうか?」

 そう言って、少しだけ寂しげな目をするカルティナ。

 

「その感じだと、以前の記憶はまだ戻らないのか?」

「ああ、さっぱりだ。……家族や友人たちの記憶を忘れたまま、というのは少し寂しいものではある」

 カルティナはラディウスの問いにそう答えると一度言葉を切り、胸に手を当て一呼吸置いてから、

「ただ……最近では無理に思い出さなくても良いのではないかとも思いつつあるのだ」 と、言葉を続ける。


「それはまた……何故だ?」

「記憶を失う前の私は、ラディを仇討ちの相手と間違えて襲ったのだろう?」

「ああ、まあそうだな……」

「それはつまり……仇討ちをしなければならないような事があった……という事だ。であれば、以前の記憶が戻るという事は、それもまた思い出すという事になる。……私は正直言うと、それが少し怖いのだ。どのような悲劇があったのか今の私には分からない。分からないが……『仇討ち』という言葉から想像出来る悲劇はそう多くはない。それを思い出してしまった時、私は……」

 そこまで言った所で、口を閉ざすカルティナ。

 その表情には、憂いや悲しみといった負の感情を帯びた、そんな陰りがあった。


「そうか……。まあ……たしかにそうだな」

 カルティナに対してラディウスはそれだけ言葉を返すと、思案を巡らせる。

 

 ――ここが過去の世界であり、グランベイルが無事である以上、悲劇は起きない。

 しかし、『時を遡る前の世界で起きた事』の記憶は消えない。

 そして、この時代にはまだカルティナは生まれていない。

 当然だがカルティナの家族はまだ家族ではないし、友人も……生まれているかどうか怪しい。少なくとも同年代の友人は生まれていない。

 そういった事をひっくるめて考えると、記憶を取り戻す事が本人にとって一番良い事である、とは言えないのかもしれないな……

 

 と。

二手に分かれても、もう一つの世界を介する事で、互いに一瞬で情報や道具をやり取り出来るのも、ある意味チートな気がします(何)


とまあそれはそれとして、次回の更新ですが……明後日、火曜日を予定しています!

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