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第1話 あの時の親子。百命草とレマノー村。

 ――うーん、あの呪法への対抗術式はこれで問題なさそうな感じだが……


 ラディウスが完成させた術式を見て、顎に手を当てながら心の中で呟く。


 グランベイルへと戻ってきたラディウスは、メルティーナ法国へ行く前に……と、向こう側の世界の呪法を解析し、どうにかこうにか、呪法を無効化し、解除するための術式を生み出す算段がついた。

 

 ――しかし……問題はこれを組み込むためのガジェットの方だな……

 そう……その術式は、並の素材で作られたガジェットでは安定して発動させ、更にそれを維持する事が難しいような代物だった。

 そのため、術式――発動する魔法に耐えうるような頑強なガジェットが必要なのだが……

 それには、かなり特殊な素材が必要である事に気づき、ため息をつくラディウス。


「ラディ? もしかして……例の術式に苦戦中?」

 いつの間にかラディウスの近くにいたセシリアが、そんな風に問いかけてくる。

 

「うおっ!? いつの間に!?」

 セシリアの存在に驚きの声を上げるラディウス。

 

「えっと……結構前からいたよ。――なんか、集中しているから声をかけずらくてね」

 頬を人差し指で

「あ、ああ、そうだったのか。それはすまん。――で、術式の話だったな」

「うん。やっぱり難しい?」

「いや、術式なら今さっき完成した所だ。……だが、それを組み込むための頑強なガジェットを作ろうとすると、必要になる素材がどうにも……な」

「そんなに特殊な素材が必要なの?」

「大半はそうでもないんだが……一部どうしても、な」

 ラディウスはそう言いながら、必要になるであろう素材を近くの紙切れに書き記すと、それをセシリアに見せる。 

「それが必要になる素材だ」


「どれどれ……」

 と言って紙切れを手に取り、それに目を通すセシリア。


 そして、全て目を通し終えた所で、

「えーっと……。たしかに大体はどうにかなりそうだけど、このレメトン氷晶とエルメの紅焔石って言うのはちょっと聞いた事ないなぁ……これってどこで手に入るの?」

 と、ラディウスに問いの言葉を投げかけた。

 

「……実の所、そういう物がある事は知っているんだが、俺もそれ自体がどこでどうやって手に入るのかは知らなかったりするんだよなぁ……これが」

「ええっ!?」

 ラディウスの言葉に驚くセシリア。

 さすがに記したラディウス自身が知らないとは思っていなかったようだ。


 ――過去の記憶……今この時から見ると未来だが、張り巡らされた鉄道網のお陰で、大陸各地との交易が容易に行われるようになった事により、これを加工した物も王都に輸入されて出回るようになったんだが……どこから輸入していたのか、と言われると良くわからないんだよなぁ……

 必要な時は、研究所御用達の商人から買っていただけだし……


 とは口にせず心の中だけで呟くと、

「ああ。まあ……後で調べてみる」

 と、そんな風に答えるラディウス。

 

 ――でもまあ……冒険者ギルドにある採取物図鑑に乗っているだろう、多分。

 

 ラディウスはこの間、何かの時のためにと冒険者登録をしに行った際に見つけた共用の資料にそれがあった事を思い出し、そんな風に考える。


「じゃあ私の方でもちょっと調べてみるね。聖堂にちょうどいい本があるし。……あと、素材とはちょっと違うっぽいけど、このゼーネリートの水薬ってのは何?」

 セシリアは紙切れの一番下に書かれていたそれを見ながら小首をかしげて問う。


「ああ、それはソルムの薬液を精製するのに必要な薬草の1つである百命草っていう物と、幾つかの魔物素材を、塩分濃度の濃い塩水に混ぜて作る代物だな。まあ……魔物素材に関してはこの近辺にも生息している魔物だし、雑貨屋で売っているかもしれないな。もし在庫がなかったとしても、狩りにいけばいいだけだ」

「なるほど……。百命草――ソルムの薬液って、この間のレスティア村の事件でガジェットの魔力回復に使ったアレ?」

「そう、それだ。ソルムの薬液を精製している場所であれば、百命草も必ずある。つまり、レマノー村で手に入るはずだ」

「そうなの? それじゃあ明日、日曜学校のためにレマノー村へ行く予定だから、そのついでに貰ってくるよ」

「あー、それならカチュアに借りた傘を返す必要もあるし、俺も行こう」

 ラディウスは、部屋の隅においてあるカチュアから借りた傘を見ながら、そうセシリアに告げた。


「あ、だったらついでに魔法とガジェットの授業もお願い出来るかな? 多分……というか絶対に、私たち教会の人間よりもラディの方が詳しいだろうからね」

「なるほど……。んー、まあ、上手く教えられるかはわからんが、そのくらいなら構わんぞ」

「教え方についてはサポートするから大丈夫だよ! って事で、よろしくね!」

「ああ、了解だ」


 ――了解したはいいが……はてさて、どうやって教えるのが良いのだろうか……

 うーん、いっそ適当に何かガジェットを作ってもらうとかがいい……のか?


 などという、とんでもない事を思案し始めるラディウスだった。

タイトルに出ている「親子」が出てきていませんが、他にこの節に合う適切なタイトルが思いつきませんでした(汗)


さて、そんな所で次回の更新ですが……明後日、月曜日の予定です!

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