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第4話 村への道を走る。知識の大事さを悟る。

「橋っぽいものが見えるけど、川はあそこか?」

「はあ、はあ……。え? あ、そ、そうよ! あそこが、川よ!」

「よし、あそこに飛び込め!」

「りょ、了解よ!」

 

 ラディウスに飛び込めと言われた全力疾走で息切れ寸前のルーナが、道を横切る川へと、木製の橋の上から勢いよく飛び込む。

 

「こ……これで大丈夫……よね?」

「いちお――っ!?」

 ルーナの問いに答えようとして驚くラディウス。

 そして、顔を赤くしながらくるっと後ろを向いた。

 

「なんで後ろを向――」

 首をかしげるルーナに、ラディウスは慌てた口調で、

「服っ! 前っ!」

 と、短く告げる。

 

「へっ?」

 ルーナは視線を下に向ける。

 すると、そこには前面がボロボロになった服があった。

 言うまでもなく、前が丸見えだ。

 

「うひゃあっ!」

 と、今度はルーナが驚き、慌てて手で前を隠しながら、後ろを向いて川に深く浸かった。

 幸い川の水深はルーナの腰くらいまであるので、しゃがめば問題はない。まあ……ある程度は、だが……

 

「み、見た……?」

「み、見たけど、見ていない事にする」

 ラディウスは正直に『何が』とは言わず、それだけ口にする。

 そして、ルーナに聴こえない程の小声で、

「2つの……大きな丘があった……」

 なんて事を呟いた。


 ――い、今のは事故よね、事故! ま、魔物のせい! そう、魔物のせいなのよ! だからしょうがないわっ!

 ルーナはそんな事を心の中で叫び、自分で自分を納得させた後、ボロボロになった服に視線を向け、顔を赤くしながら、

「そ、それより……。これ、どうしたらいいのかしら……。さすがに着替えは持ってきていないし……」

 と、呟くように言い、頭を悩ますルーナ。

 

「あー、俺がさっき使った修復魔法で直すよ。まあとりあえず……俺は後ろを向いておくから、川から上がってくれ。川の中で使ったらすぐ濡れてしまう」

「え? あ、そういえばあの魔法があったわね……。でも、ここまでボロボロになったのを戻せる物なの?」

「多分いけると思うぞ。無理でも複数回使えばいいだけだしな」

「なるほど……それもそうね。今上がるわ。……こ、こっち見ちゃ駄目よ?」

 ラディウスの説明に納得し、橋に手をかけて川から上がるルーナ。


 ラディウスはその間、何も言わずにひたすら反対側を見続けた。

 紳士的――というよりは、振り向いたら顔が真っ赤なのがばれてしまうので、それを避けるためだ。


「そのまま後ろを向いてくれないか」

 そうラディウスに言われ、ルーナはくるりと後ろを向く。

 

 ラディウスはタリスマン型のガジェットをポケットから取り出すと、そのルーナの背に向かって手をかざし、

「――よっ!」

 という掛け声と共に、レストア・改を発動する。

 

 直後、ルーナのボロボロになった服が緑色の光に包まれたかと思うと、物凄い速さで修復されていき、1分も経たずに元の完全な状態に戻った。もちろん濡れてもいない。

 

「す、凄い……。何もなかったかのように完璧に修復されたわ……。というか、新品並に綺麗になっているし……」

 そう感嘆の声を上げながら一回転してみせるルーナ。

 

「どうやら問題はなさそうだな」

 そう言って首を縦に振るラディウスに、ルーナが微笑む。

「ええ、まったく問題ないわ! ありがとう!」

 

「ああ、どういたしまして。……でも、ディズ・スパイダーの体液の事、なんで知らなかったんだ? 今まで倒した事あるんだよな?」

 ラディウスがもっともな疑問を口にすると、ルーナは「ええ」と言って、背負っている槍を右手で掴み、構える。

 そして、それを正面に向かって突き出しながら、

「今まではこんな風に、目の所をブスッと槍で突き刺していたのよ。そうすると簡単に倒せるから」

 と、そんな風に説明した。

 

「なるほど……奴の弱点である目を狙っていたのか。それなら破裂する事もないし、知らなくてもおかしくはないか」

 頷き、納得するラディウスに対し、肩を落として言う。

「ええ。……でも、もう少ししっかり魔物について学んでおくべきだったと、身を持って理解したわ……。こればっかりはお父さんの言っていたとおりだったわ……」


「ん? 言っていた通り?」

「ええ。――戦いとは、ありとあらゆる魔物の知識を覚える事から始まる! 魔物の知識なくして戦いを挑めば、不意の攻撃で手痛いダメージを負う事になる! 武器も魔法も、魔物を倒すための力ではない! ただの手段だ! 真の力とは知識だ! って、耳にタコが出来るくらい聞かされていたのよ」

 ラディウスの問いかけに対し、ルーナはディックの真似をしながら答える。


 ――なるほど……。若干勢いで言った感はあるが、基本的にはその通りだな。

 そう思ったラディウスは、頭を掻きながらルーナに向かって告げる。

「たしかにディックさんの言う事は正しいな。でもまあ……なんだ? これから学べばいいだけの話だ。知識の得る事に関しては、遅いも早いもないからな」


「……そうね、その通りね。うん、ようやく理解したわ。……こうなれば、全ての魔物の知識と……ついでに全ての魔法の知識も得てみせるわよっ! フッフッフーッ!」

 ルーナは槍を背負いながらラディウスの言葉にそう返し、気合を込めて胸の前で握り拳を作った。ついでに鼻息も荒い。

 

 ――気合が入っているのは良い事だが……。なんだか妙なスイッチも一緒に入った気もするぞ……? 大丈夫だろうか……

 ラディウスはルーナの様子を見ながらそんな事を思い、ちょっとだけ不安になったのだった。

ルーナの何かのスイッチが入ったようですが、はてさて……



――――――――――

「サイキッカーの異世界調査録サーベイレコード」も、同時更新しています!

とても先の長い謎の多い話ですが、お読みいただけると嬉しいです!

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